今しか伝えられない10年間の記録と経験知
10年という節目に、本誌では東日本大震災をテーマにした3月臨時増刊号を発行しました。臨床現場に当時の現場を経験していない看護職が増える中、本号は、この10年の医療・看護の記録を集め、その経験知を次世代を担う看護職へと伝えることを目的に編集。著者の皆さまにも、コロナ禍で医療現場がひっ迫する中、熱意を持ってご執筆いただきました。以下に、その内容をご紹介します。
総特集
東日本大震災 医療・看護の10年
次世代を担う看護職へ
●A4判変型/152ページ
●定価2,200円(本体2,000円+税10%)
日本看護協会と岩手県・宮城県・福島県の各県協会には、発災直後からこの10年間に、各協会が果たした役割や、次なる大規模災害への備えについてまとめていただきました。具体的には、発災直後からの災害派遣ナース等の被災者への支援、看護の質向上・育成支援、看護職確保、政策提言など、中長期にわたる取り組みなどです。また、教訓の発信・伝承、マニュアルの整備、災害教育の充実、地域ネットワーク構築など、次なる災害への備えについても紹介されています。さらに各協会の会長からは、次世代を担う看護職へのメッセージもいただきました。
2章では、病院・介護施設・訪問看護ステーションに、震災によって施設・周辺地域が受けた被害と復興までの過程・取り組み、現在の施設や周辺地域での防災・減災への備えや取り組みなどについてご報告いただきました。10年が経ち、各施設とも異動や退職で発災当時からの状況を知る職員が少なくなる中、今しか伝えられない経験知を次世代に残そうという熱意を持って情報を集め、ご執筆いただきました。
東日本大震災は、日本周辺における観測史上最大の地震に、巨大津波、原子力発電所事故を伴ったことで、その被害は大きく広範囲に及びました。それゆえに、避難生活も長期化し、10年経った今も原子力発電所事故による避難指示が解除されていない区域が存在し、避難生活は続いています。また、多くの人が、親しい人や大事なものを失っており、その心のケアへのニーズもなくなることはありません。3章では、学会、大学、行政、NPO等に所属する看護職から、それぞれの立場で支援ニーズを捉えて行っている中長期の活動を報告していただきました。
日本看護協会出版会編集部 編
●A5判/704ページ
2011年9月発行
●定価2,640円
(本体2,400円+税10%)
ISBN 978-4-8180-1611-8
地震・津波・原発事故による未曾有の大災害に対し、看護職がどう行動し被災地域の医療を支えたか、看護は何をできるのかについての活動レポート集。自らも被災し悲しみを抱えながら必死に医療活動を続けた人、被災地のために何かしたいと情報もない中で現地に入り、不眠不休で支援を行った人、被災地の患者・住民を受け入れた施設など、さまざまな立場の看護職183人による活動報告は、看護の力の大きさ・素晴らしさをあらためて感じさせます。
柳田邦男 酒井明子 編
●A5版/296ページ
2018年6月発行
●定価2,640円
(本体2,400円+税10%)
ISBN 978-4-8180-2123-5
黒田裕子氏は東日本大震災時の支援活動でも大きな役割を果たした1人ですが、残念ながら3月臨時増刊号では、その生の言葉をお届けすることはできませんでした。ただ、「3-7 福島県 避難所『ビックパレットふくしま』から生まれた『さすけなぶる』」の原稿の中にも、その存在の大きさを示すエピソードが紹介されています。本書は、見守り、寄り添い、1人ひとりの再生の力を引き出す支援—それを象徴する数々の黒田語録を、同氏によって結び付けられた著者らが紐解き、災害看護の本質に迫ったものです。