本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。
川越博美さんから井部俊子さんへの手紙
病院スタッフの“地域へつなぐ力”
文:川越博美
看護が、政策や制度の作成にかかわる必要性について、井部さんの考えにまったく同感です。また、看護に関連する制度はやはり厚生労働省や日本医師会・日本看護協会などが中心になって動かしているのだと再確認しました。私たち現場にいる者は、療養者や家族の思いに沿ったケアを提供できるよう、制度改革の必要性を訴えます。半面、制度設計者とどのようにコンタクトをとり、物申す機会をつくっていくかは、依然として課題です。
さて、私の住む東京都墨田区では、区民ががんを知り、地域で安心して暮らすために、毎年「がんアクションプラン&ピンクリボンin墨田」を開催しています。その一環で、私はある病院で「在宅緩和ケアにおける訪問看護の実際」と題して話をしました。質疑応答の際に、その病院の医師から「今日の話は自分には“目からうろこ”。がん患者が在宅でこのようにケアを受けていることは知らなかった。病院は在宅をどのようにサポートできるのか。病院への希望があれば教えてほしい」と質問がありました。
病院の医師が訪問看護師の話に真摯に耳を傾け、在宅を支えようとしてくださっていることはうれしい限りです。一方で、病院のスタッフには在宅ケアのことを知らない人がまだまだいるのだと、あらためて思い知らされました。入院患者を適切な時期に適切なサービスにつなぐことができないのは、病院スタッフが在宅ケアの実際をわかっていないためかもしれません。医師だけではなく、看護師も同様でしょうか。患者にとって一番よいのは、入院継続か、転院か、在宅療養か……。治療中は入院がべストでしょう。しかしその後は?