誤嚥性肺炎や窒息のリスクが気になる食事ケア。
でも、嚥下障害と姿勢アセスメントの基本的な知識と技術があれば、利用者が安全に食べることを継続して支援できます。
筆者らが提唱するPOTT プログラムの基本スキルを基に、現場で遭遇する問題の原因やケアの方法・根拠を紹介します。
執筆
定松 ルリ子 さだまつ るりこ
株式会社ケアライフエナジー
訪問看護ステーションアスレ
摂食嚥下障害看護認定看護師
知りたいこと その❽
誤嚥性肺炎を繰り返す人のポジショニングは
どうすればいい?
ポジショニングによる
誤嚥性肺炎の予防
食べ物や唾液などが声帯を越えて気管内に流入することを誤嚥と言います。誤嚥性肺炎は誤嚥を繰り返すことで生じる肺炎で、誤嚥物による侵襲が多くなり、炎症に対する免疫力・抵抗力が低下することにより発症します。誤嚥性肺炎による日常生活や社会活動の制限は、精神的なストレスやQOLの低下にもつながってきます。
看護ケアにおける誤嚥性肺炎の再発予防は、嚥下訓練や口腔ケアだけでなく、生活援助の視点に立った多角的な対応が必要となります。食事のポジショニングはその一例で、以下のような予防効果が期待できます。
①口腔や咽頭腔の位置と形態を整え、安全に飲みこめる角度と食物の流れる経路を機能的に確保することで、誤嚥のリスクを最小限にすることができる
②体幹の支持性を確保することで姿勢が安定し、食事をする構えを全身でつくり出す。嚥下筋群の運動がスムーズになり、食欲を促し生理機能を活発化させ消化吸収を促進させる。
③足底を接地した骨盤軽度前傾位は大きな呼吸ができ、また咳の力をかけやすい姿勢でもある。食事の際の呼吸負荷を避け、かつ異物の除去もしやすい。
必要なアセスメントと計画
食事観察を通して本人の発するシグナル(誤嚥を疑う症状)をキャッチして、誤嚥の原因をアセスメントし、誘因となる活動や姿勢、環境について観察し情報を分析します。
食事姿勢は、POTTプログラムの食事姿勢アセスメントシートを使用して課題を抽出し、姿勢の保持能力や頭頸部の角度にも注意を払います(本誌2025年6月号および8月号を参照)。
特に誤嚥を繰り返す人の多くは姿勢が不安定となり崩れがちで、時間経過とともに顎が上がりやすくなります。頸部伸展位(前屈しない)では、咽頭と気管が直線になり誤嚥しやすくなります(図表2左)。また、顎が緩み舌も落ち込みやすくなるため、飲み込みの圧が不十分で咽頭に食物が残りやすくなります。
誤嚥性肺炎の既往がある高齢者は、嚥下機能低下による早期咽頭流入が高頻度に観察されたとの報告もあり1)、姿勢調整には体幹角度の調整と頭頸部のポジショニングが重要なポイントになると考えられます。
→続きは本誌で(コミュニティケア2025年11月号)