肌に触れるその手の優しさ、
その存在に救われる
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渡辺えり[劇作家・演出家・女優・歌手]
わたなべ・えり|山形県出身。舞台芸術学院、青俳演出部を経て、1978年から「劇団3○○」を20年間主催。劇作家、演出家、女優として、また歌手として舞台、映像、マスコミのジャンルを問わず活躍する。戯曲の他、『早すぎる自叙伝 えり子の冒険』(小学館)、『思い入れ歌謡劇場』(中央公論新社)、『渡辺えりの人生相談 荒波を乗り越える50の知恵』(毎日新聞出版)など、著作多数。現在は山形新聞で、独自の切り口で綴るコラム「渡辺えりのちょっとブレーク」も大好評連載中。
子どものころから病弱で、往診に来てくださるお医者さんや看護師さんの白衣、そしてアルコール消毒液のにおいを嗅ぐとホッとしてそれだけで具合がよくなるように感じたものだった。
そっとおなかに置く手、おでこに当てる柔らかい手、体温計を挟むために脇の下に触れる手。肌に触れるその手の優しさで、病でくすんだ心が回復していく。
母親が若いころに蓄膿症で手術を受けたことがあったというのでその体質を受け継いだためか、小学生のころからしょっちゅう耳鼻咽喉科に通っていた。抗生物質を飲んでもよくならず、学校の机の引き出しの中がチリ紙であふれていた。耳鼻咽喉科の先生も優しく、大好きだったが、看護師さんの1人におおらかで明るく大きな声の、そして少し太めの年配の方がいて「えりちゃん、えりちゃん」とかわいがってくださり、その方がいると本当に安心だった。中学生のときに手術を受けることになったが、当時の手術は歯茎を切って、鼻の奥の膿を取り出し、また切った部分を縫って元に戻すという大手術だった。
→続きは本誌で(コミュニティケア2023年11月号)