平成28年度診療報酬改定で「認知症ケア加算」が新設され、急性期病院では認知症患者の視点を尊重したケアが重視されるようになってきました。小社刊『多職種チームで取り組む 認知症ケアの手引き』は、加算要件となっている認知症ケアチームの活動や手順書作成について、わかりやすく解説しています。
これから認知症ケア加算を申請したいと考えている施設はもちろんのこと、すでに算定している施設にも、日々の実践や職員教育などに幅広くご活用いただけます。
■急性期病院での認知症患者への対応の現状
身体疾患で急性期病院に入院した高齢者が認知症だった、というケースは最近では珍しくないことでしょう。しかし認知症が社会問題となってからまだ日は浅く、これまで急性期病院では認知症に関してあまり意識されてこなかったため、急増している認知症患者の対応に苦慮している現状があります。
「治療優先」の急性期病院では、歩き回る、大声を出す、処置を拒否するなどの行為をする認知症患者に対して、仕方なく行動制限や身体的拘束などを行う場合もまだまだ見られます。
■「認知症ケア加算」の新設
厚生労働省研究班によると、認知症の人の割合は団塊の世代が75歳以上となる2025年に全高齢者の約20%(675万人)、2060年には約25%(850万人)に達すると推計されています。
また、全日本病院協会が行った平成25(2013)年度老人保健事業の調査では、認知症の高齢者の割合は一般病床で約15%であり、せん妄や軽度認知障害の高齢者も含めればその割合はさらに高くなります。
よって、今後の急速な高齢化と認知症高齢者のさらなる増加を考えれば、急性期病院においても認知症の人への対応がますます重要となることが考えられます。
こうした状況に対応するため、平成28(2016)年度診療報酬改定では、認知症ケアチームを設置して、認知症や高齢者に関する専門知識を持った看護師や多職種が連携して認知症の人にケアを行うことに対して「認知症ケア加算」(表1)が新設されました。
■「認知症ケア加算」算定の状況
日本看護協会が公表した「2016年病院看護実態調査」の結果速報によると、2016年10月30日現在、認知症ケア加算の算定病院は866施設(24.4%)で、このうち加算1の算定病院は185施設(21.4%)にとどまっています。
加算を算定していない理由では「算定要件を満たしていない」が73.0%と多数を占めており、その理由として「認知症ケアに関する手順書を整備していない」36.2%、「認知症看護認定看護師等の配置が難しい」26.5%、「地域で看護師の研修受講機会が少ない」21.6%、が挙げられています(表2)。
■小社刊『多職種チームで取り組む 認知症ケアの手引き』と『急性期病院でのステップアップ認知症看護』を加算算定に活用しよう
『多職種チームで取り組む 認知症ケアの手引き』は、認知症ケア加算の解説に加えて、算定要件となっている認知症ケアチームのつくり方や活動内容、手順書作成に役立つ認知症の基礎知識、認知症高齢者への看護計画、身体的拘束の解除に向けた取り組み、鎮静を目的とした薬物の適正使用など、現場のニーズにあった実践に役立つ内容を多数掲載しています。
また姉妹書の『急性期病院でのステップアップ認知症看護』では、やはり加算要件となっている病院職員への認知症患者のケアに関する研修の内容や実施例について詳細に解説しています。
もう1冊の姉妹書『急性期病院で治療を受ける認知症高齢者のケア』では、この2冊の内容を踏まえた認知症看護認定看護師によるケアの実践を13例掲載しています。大学病院、中規模病院、デイサービス施設など多様な施設での取り組みを紹介しているので、自施設でのケアの参考になると思います。
ぜひ、3冊あわせてご活用ください。
鈴木みずえ 編
●B5判 152ページ
●定価(本体2,200円+税)
ISBN:978-4-8180-2035-1
「看護実践能力習熟段階に沿った
急性期病院での
ステップアップ認知症看護」
鈴木みずえ 著
吉村浩美・加藤滋代 編集アドバイス
●B5判 212ページ
●定価(本体2,600円+税)
ISBN:978-4-8180-1983-6
「パーソン・センタードな視点から進める
急性期病院で治療を受ける
認知症高齢者のケア
―入院時から退院後の地域連携まで」
鈴木みずえ 編
桑原弓枝・吉村浩美 編集アドバイス
●B5判 232ページ
●定価(本体2,600円+税)
ISBN:978-4-8180-1793-1
日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)