地域ケアの今(30)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

AIに負けない「看護学」

文:上野まり

 

本誌1月号で「AI」(Artificial Intelligence:人工知能)についての話をしました。今回はその続編です。

 

2018年1月1日の読売新聞に「AI革命すぐそこに」という記事がありました。AIを搭載した、お好み焼きをつくるロボットや自動運転できる自動車、映像や文字が表示されるメガネ型の小型端末(それを装着して日本語を見ると英語に翻訳される)などが紹介されていました。AIは今後ますます加速度的に進化していくようで、その動向から目が離せません。

 

また、国立情報学研究所の新井紀子氏が中心となって取り組んでいる、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」の記事もありました。2016年の研究では、そのロボットは大学入試センター試験の模試で偏差値57.1という結果を出し、全国の国立・私立の535大学への入学可能性が80%以上と判定されました。計算力や記憶力が問われる数学・歴史の能力が高く、読解力を要する国語・英語は平均点前後だったそうです。

 

AIは、過去のデータや統計に基づいて最適な答えを導き出すことを得意とする半面、過去に例のない・個別性の高い答えを導き出すことや、創造的な作業は不得手です。つまり、これから社会で活躍する人材を育成するには、読解力や常識的な倫理観、文化に基づいた判断力など、AIが不得手な力を伸ばしていく必要性がありそうです。

 

丸暗記の学生はAIに負ける?!

 

2018年1月現在、看護系大学数は260校を超えようとしています。看護系大学数の増加は、大学に入れるチャンスや大卒看護師の増加につながる喜ばしいことです。

 

大昔の数少ない看護系大学出身者の私には、忘れられないエピソードがあります。高校3年生の進路相談の際、担任の先生に「看護系大学を受験したい」と話すと、「大学なんてあるのか? お前は看護の先生になるために大学に行きたいのか?」と聞かれ、「先生ではなく看護師になりたいです」と答えましたが、「先生はよく知らないから自分で調べなさい」と言われました。その後、無事に大学を卒業し病院に入職すると、同期の医師に「大学に行こうと思わなかったの?」と聞かれ、「大学に行きましたよ」と答えたのですが、「“普通の大学”のことだよ」と言われました。普通の大学と同じように看護にも大学があることが知られていなかったのです。それから数十年たち、看護系大学が当たり前の存在になり、今や大卒看護師は3割を超えているようです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年3月号)