訪問看護ステーションの経営戦略(3)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

1時間でできるエリアマーケティング(前編)

渡邉 尚之

 

 

皆さんは、自分の訪問看護ステーションがある地域についてエリアマーケティング(商圏分析)をしたことはありますか? これは特別に難しい調査などではなく、簡単に言えば、自ステーションのある地域の特徴や人口動態、医療機関・介護事業所の開設状況、同じ地域で展開しているほかの訪問看護ステーション数や特徴を“見える化”したことがあるか、という意味です。

 

これらについて専門の調査会社などに依頼すると、非常に細かく調べてくれます。一方で、調査費用が高額であったり、調査の専門家であっても医療・介護についての知識・理解が不十分だったりと、なかなか積極的な活用が難しいという問題があります。

 

しかし、実はエリアマーケティングは、公表されている官公庁の統計資料や業界団体のデータなどを活用して、自力でもある程度、行うことが可能です。こうした方法であれば、短時間かつコストをかけずに地域の傾向や動向をつかむことができ、効率的です。

 

そこで、今回・次回の2回にわたり、「1時間でできるエリアマーケティング」の方法を紹介します。

 

 

エリアマーケティングの必要性

 

エリアマーケティングにより、下記などの地域の特性が把握できます。
①人口特性(現在の人口、将来推計、高齢者数、高齢化率など)
②医療・介護需要(市区町村の医療・介護施策、医療機関・介護事業所数など)
③訪問看護の市場規模・需要予測(要介護認定者数、訪問看護サービスの利用状況、訪問看護ステーション数など)

 

エリアマーケティングの実施の最大のメリットは、情報やデータに基づき自ステーションの立ち位置を客観的に把握し、それを経営戦略や将来構想の検討に役立てることができる点です。逆に言えば、エリアマーケティングをせずにただ目の前の業務だけに邁進していては、地域・利用者の需要と自ステーションの展開するサービスが乖離したり、競合他社に遅れをとったりしてしまう危険性があります。

 

自ステーションを運営している地域の人口・高齢者数・高齢化率・要介護認定者数・訪問看護ステーション数などを把握せずに事業展開を続けるのは、例えるならば地図を持たずに航海をするようなものです。それでは自ステーションの経営が危うくなるばかりでなく、潜在的な需要も含め、訪問看護を必要とする地域住民に適切なサービスを届けられないという事態になりかねません。

 

医療・介護事業は、地域の特性に合った、地域に根づいた展開が求められます。そのため、きちんとエリアマーケティングを行い、それを踏まえて経営戦略を検討する必要があるのです。これは単に自ステーションの利益追求や経営安定化という視点のみならず、地域・利用者にとって必要な訪問看護ステーションであり続けるためにも重要です。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年3月号)