看護と経営(8)

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

*vol.1〜6は【解説編】、vol.7以降は【実践編】となります。

 


 

vol.8 実践編②

「医療の質」とその評価

 

鳥海 和輝

とりうみ・かずき◉大学卒業後、社会保障系出版社に勤務。医療保険専門誌、介護保険専門誌の記者やデスク等を経て現職。現在、ニュースサイト『Gem Med』にて、医療政策・行政情報を発信している。

 

 

前号では病院経営を考える上で、①病院の維持、地域医療提供体制の維持を考える、②医療の質の向上をめざす、③医療は「保険制度」の下にある点を忘れない−の3点が最重要視点になることをお話しました。

 

今号では、②の「医療の質」向上について深掘りします。

 

「医療の質」を評価・可視化する事業へ参加

 

医療の質の向上をめざすことに疑問はないと思いますが、では、「医療の質」とは何でしょう?

 

この点について「唯一の解」は存在しないようです。例えば、「傷病を治すこと」「患者のQOLを維持・向上させること」「院内感染を引き起こさないこと」などさまざまな視点があり、1つの指標で医療の質が高い/低いを判断することは極めて困難です。そのため、世界各国で医療の質をどう測定するかという研究が進められています。

 

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NFocus  社会的養護経験者を孤立させない仕組みづくり

 

 

社会的養護経験者を孤立させない仕組みづくり

 

宮地 菜穂子 ● みやち なおこ

同朋大学社会福祉学部 准教授

 

[略歴]

大学卒業後、児童養護施設にて児童指導員として勤務する中で社会的養護現場の諸問題を認識し、退職後に進学。大学院修了後は NPO 法人アスペ・エルデの会事務局長、中京大学非常勤講師等を経て現職。博士(社会学)・社会福祉士・保育士・専門社会調査士。専門は社会的養護現場における子どもの発達支援・子ども家庭福祉学。

 

 

2020年度に厚生労働省が実施した社会的養護経験者を対象とした初の全国調査により、児童養護施設等からの退所後、その多くが支援者とのつながりが途切れ、生活に困難を抱えている実態が明らかになりました。これらの課題解決のため、社会的養護経験者の社会的孤立を防ぎ、自立を支える仕組みづくりに取り組むプロジェクトについて報告します。

 

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〈新連載〉暮らしは筋書きのないドラマ

〈新連載〉

 

第 1 回
「なりわい」
人生最期の最高の他人

 

なるせ ゆうせい
脚本家/演出家
株式会社オフィスインベーダー代表

 

「これからこの国は少子高齢化社会です!」
なんて誰もがわかりきってることをどこかのお偉い方々はちょくちょく発信したりするけれども、だからと言って看護や介護などの業界で働く人たちの待遇やらが劇的によくなってるかと言えば、なんだか、うーん、て首をかしげてしまう(というと怒られるから「これはあくまで私の主観です」と付け足しておきましょう)。

 

そんな業界に少しでもスポットライトが当たればいいなと思って、数年前、「ヘルプマン!」という介護関連の漫画を舞台化させてもらったことがありました(申し遅れましたが、わたくし舞台や映画づくりをなりわいとしてる生き物です)。

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〈新連載〉実践に役立つ訪問看護の注目論文

〈新連載〉

 

第 1 回
認知症の家族介護者への心理的支援
山川 みやえ・繁信 和恵・関口 亮子

 

今月の注目論文
認知症が高齢者夫婦の夫婦関係、親密さ、セクシュアリティに与える影響:質的系統的文献検討

Holdsworth K, McCabe M.: The Impact of Dementia on Relationships, Intimacy, and Sexuality in Later Life Couples: An Integrative Qualitative Analysis of Existing Literature. Journal of Clinical Gerontology and Geriatrics, 41(1) : p.3-19, 2018. doi:10.1080/07317115.2017.1380102.

 

論文の要旨(研究結果の概要)
認知症の発症と進行は、夫婦関係に深刻な影響を与える。研究チームは、認知症が高齢者夫婦の夫婦関係、親密さに与える影響を調査した質的研究論文を系統的にレビューした。対象論文は2016年5月に行ったWeb of Science、PsycINFO、MEDLINE、Scopus、CINAHLの5つのデータベース検索より、13の関連研究を特定した。分析結果として浮かび上がったテーマは以下のとおりである。

 

1.責任と役割の変化:認知症の進行により、夫婦間の責任分担が大きく変わる。
2.アイデンティティと自尊心の問題:認知症は個人のアイデンティティや自尊心に深刻な影響を与える。
3.愛情や献身、相互性の変化:夫婦関係の基盤をなす愛情や献身、関わり合いが、認知症の進行によって揺るがされる。
4.夫婦関係の変化:認知症の進行に伴い、夫婦関係そのものが変わることが多い。

 

本レビューにより、認知症は夫婦関係に大きな影響を与えることが明らかになった。しかし、認知症を持つ本人や夫婦共同の視点を含む研究が依然として不足しているため、将来的には配偶者、認知症を持つ本人、および夫婦共同の視点からさらなる研究が必要である。認知症が夫婦関係にもたらす影響は深刻であり、臨床的には個別のニーズに応じた支援が不可欠である。夫婦が直面する親密さや関係性の変化に的確に対処するため、個別性を踏まえた情報とサポートを提供することが重要である。

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

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