NT2013年10月号連載【退院支援の仕組みづくりと実践事例】紹介

NT1310表紙ナースたちが退院支援の仕組みをつくり、うまくいっている病院の実践事例を1つ取り上げ、「意思決定支援」と「自律支援」を軸に病棟ナースと在宅ナースがそれぞれの実践を振り返ります。加えて管理者から仕組みづくりの経緯とその内容をうかがいます。

 

 

 

 

 

 

[監修]

宇都宮 宏子 (在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)

[筆 者]

藤井 さとみ(外科病棟看護師)

柴崎 恵子(美祢市訪問看護ステーション 管理者)

大林 由美子(看護副部長)

 

今月の病院 

山口赤十字病院

 

事例紹介

 

Bさん(98歳/女性)
Bさんは、大腸がん穿孔で、緊急にライフスタイルを左右するストーマ造設術を受けることになった。穿孔の痛みがあるにもかかわらず、「動けなくなるなら、命がなくなったほうがいい」と冷静に返答されるなど、高齢であっても意思決定ができる方だった。医師はADLの維持に努めることを約束し、手術の同意を得た。家族は長男と足の不自由な嫁の3人であり、70代の嫁は「お義母さんが頼りなのに」と動揺されていた。

 

術前から冷静に対応される98歳のBさんを見て、希望どおりADLを保ち、医師やMSW、チームメンバーと在宅復帰をめざすという目標を共有し、入院時より退院支援に取りかかることになった。

 

まず、Bさんは介護認定を受けていなかったので、退院後の生活を考え、早期に介護認定の申請をするよう家族に依頼した。同時に嫁にも介護認定申請の話をした。ストーマのケアについては、家族の中ではBさんが一番しっかりされていたため、Bさん自身が中心となって行うこととし、高齢であることを考慮して、サポートとして訪問看護を利用する計画とした。

 

早期に離床も進み、Bさんはパウチからの便出しを練習中だったが、嘔気や倦怠感で食事があまりとれず、表情もさえない状況だった。高齢であり、回復に時間がかかることはある程度予測できたが、このままBさんが衰弱していくのではないかと心配し、対応を急いだ。ともに早期退院をめざしていた医師は、すぐに内服薬について薬剤師に相談し、嘔気を誘発する薬剤を別のものに変更した。(続く)

 

NT10月号のその他の内容はこちらから