NT2013年10月号連載【チームづくりのお悩み相談】紹介

NT1310表紙NT2013年10月号の【チームづくりのお悩み相談】のお悩みは、

 

「先輩の“教え方が嫌”など、好き嫌いの激しい新人がいます」

 

私たちは個々に独特の「感じ方の癖」「思考の癖」「行動の癖」を持っています。今回のケースは「学習の嗜好」に関係しているようです。今回はそうした個々の学習の嗜好、学習スタイルを学習者自身が開拓する視点を持つこととチームづくりの関係を考えてみます。

 

学習嗜好の理解

 

まずは、学習の好みについて理解を深めます。英国の学習スタイル研究センター(LSRC)によれば、学習スタイルに関する研究は3,800以上の論文と71種類の異なる学習スタイル理論・モデルが提唱されているといいます。それらの概念を3つの構造に整理したものがL.Curryによる学習スタイルのオニオンモデル(図1)です1)。

 

・教授法の好み
この層の学習スタイルの概念は、指導者の働きかけ方や指導法、周囲や本人の期待などの影響を受けやすく、またその嗜好は変化しやすいとされています。その基本的要因として下記の5つが挙げられています2)。
①環境的:音、光、温度、家具などの好み
②感情的:学習動機、持続性、責任感、秩序などの好み
③社会的:個別学習か、グループ学習かの好み。または指導者のリーダーシップスタイル
④身体的:視覚、聴覚、触覚などの学習の優位感覚。学習の時間帯。学習中の飲食などの好み
⑤心理的:包括的、分析的、衝動的、思考的行動の好み

 

・情報処理スタイル
この層の考え方として最も代表的なものがD.A.Kolbの学習スタイルです。この理論では、能動的実験⇔熟考的観察、具体的実践⇔抽象的概念を二軸として、①拡散的学習者、②同化的学習者、③収束的学習者、④適応的学習者という4つの学習スタイルがあることを示し、各学習者に合った環境を整える提案をしています3)。
またKolbは「人は自分の各学習スタイルに合った専門領域を選択し、その領域にひとたび入ると、その領域で基準となっている学習スタイルに適合するようになる。学習スタイルは人の好みであり、状況によって変化するが同時に長期にわたって一定に保たれる」と述べ、キャリア開発のプロセスで新たな学習スタイルを獲得している、とも述べています4)。

 

・認知・人格・スタイル
この層の学習スタイルの概念は、生来の要素が強く変化しにくいものであるため、学習者の状況を受け止め、学習者の学習の嗜好に協力的に働きかけて環境を整えることが大切だとされています。具体的には、右脳思考か左脳思考か、全体的か分析的か、言語的か画像的か、直感的か思考的かなど、16の性格タイプがあります。

学習者も指導する側も、学習中に気にかかる学習嗜好がどのようなものに起因するのか、またCurryの学習スタイルのオニオンモデルのどの層に位置するのかを観察することは、お互いにとってコミュニケーションのとり方に工夫を加えるチャンスになります。学習スタイルの判断には測定法ツールを用いるとよいでしょう。LSRCが、図2のように5種類の学習スタイルモデル分類として整理していますので参考にしてください。(続く)

 

 

[著者]永井 則子(有限会社ビジネスブレーン代表取締役)

 

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