行動変容をそっと促す ナッジを使ったアプローチ㉚

ナッジとは、人の心理特性に沿って望ましい行動へと促す設計のこと。ゲストスピーカー・医療職のタマゴたちとともに、看護・介護に役立つヒントを示します。

 

 

 

みんらぼカードの広告で
人生会議を周知する

 

竹林 正樹

たけばやし まさき

青森大学 客員教授/行動経済学研究者

 

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医療職のタマゴたちが交代でナッジを学びます。

金田 侑大さん

城戸 初音さん

難波 美羅さん

 

 

竹林 2024年11月号、12月号では、一般社団法人みんなの健康らぼ*1(以下:みんらぼ)の理事、坪谷透先生(総合内科専門医)をお招きし、どうすれば「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)」がうまく進められるかについて伺いました。

 

あらためて、坪谷先生のお話の中で、何が印象的でしたか?。

 

金田 ACPは一定以上の年齢になると皆するものと思っていましたが、実はあまり行われていないことが意外でした。

 

難波 金田君はもうやった?

 

金田 3年以内にはしようかと……。

 

竹林 坪谷先生のお話を聞いてACPの必要性を理解した金田君でもつい後回しにしてしまう点にこそ、ACPが進まない要因がありそうですね。人生、何が起こるかわかりません。明日、事故に遭う可能性だってあります。だからこそ、若い人にもACPを実行してほしいと願うのですが、「今からそんなに焦る必要ないのに」「いざとなったらなんとかなる」という楽観性バイアス*2が背景にあると後回しにされてしまうものです。

 

ところで、私は先日遺言書を作成しました。でも、このことを知り合いに話したら、数人から「なぜ? まだ早くない?」と言われました。

 

金田 それが一般的な反応なのでしょうか。

 

竹林 わが国では30代の80%以上が生命保険に加入していることからも、多くの人は早い段階で生活費を削ってまで死を見越した準備をしていると言えます。一方でお金のかからないACPや遺言書に対してはそれほど関心がないという矛盾が生じています。

 

金田 なるほど。教育を通じて、ACPの必要性を普及させ、納得した上で自己決定することが求められますね。

 

竹林 そのとおりです。しかし、必要性はわかっていても認知バイアス*3の影響を受けて行動につながらないことがあります。そんなときこそナッジの出番です。

 

*1  一般社団法人みんなの健康らぼ

(https://minlabo.net/our-story/)

*2 本誌2022年5月号参照

*3  本誌2022年5月号、6月号参照

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2025年2月号)