折々のはなし㉕

教育現場の立場から角田直枝さん、在宅現場の立場から大槻恭子さん、福祉現場の立場から鳥海房枝さんに、日々考えていること・
気になっていること・感じていることなどを述べていただく私的エッセイ。

 

 

角田 直枝

かくた なおえ

常磐大学大学院看護学研究科

 

病院・訪問看護ステーション勤務をはじめ、日本訪問看護振興財団の認定看護師教育課程訪問看護学科などで教育に携わる。2010年より茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター看護局長を12年間勤め、2022年3月に退職。同年4月より現職。がん看護専門看護師、特定行為研修修了者。

 


 

人生100年時代版発達課題

 

4月に入学した学生たちも、だんだんと落ち着いてきたこの時期。学部の1年生は最初の実習を終え、看護の扉を開いたばかりです。初めての実習では、自分のイメージよりも看護師という職業の活躍の場が幅広いことを学び、目がキラキラとしてきます。一方、4年生はつらそうな顔をした学生が増えてきます。その理由の1つが就職試験の変化によるものです。

 

 

看護学生の就職戦線に変化?

 

ここ数年、就職試験の様相がだいぶ変わってきました。変化の1つは、就職試験時期の前倒しです。最近では、3月1日から就職試験の申し込みが始まる病院も複数あります。本学では3年生の2月ぎりぎりまで実習があるので、試験の受付が早い病院を選ぶ学生は、実習が終わるや否や、3年生のうちからエントリーシートの作成に取りかからなければなりません。4年生の6月には、3人に1人くらいの学生が、すでに内定をもらっています。

 

 

そのほかで以前と大きく違うことは、複数受験が当たり前になったということです。以前は看護学校と病院との信頼関係を基に、1施設しか受験しないという考えがありました。しかし現在は、早い時期から就職試験を実施する病院が増え、1つの病院の試験結果を待っていたら、ほかの病院の受付がすべて終了していた、ということもあり得ます。そのため、大半の学生は複数の病院を受験しています。

 

さらに恐ろしい変化は、病院貸与型の奨学金が就職の保証につながらなくなってきたことです。貸与を受けていても、試験でよい評価とならない場合には不合格となり、返済免除の対象外となります。本人や親は信じがたいばかりか、ほかの病院への就職後に奨学金の返済が重くのしかかってきます。病院を取り巻く状況から、よりよい人材を確保するという視点で、評価が厳しくなっているということなのでしょう。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2024年6月号)