行動変容をそっと促す ナッジを使ったアプローチ⑩

ナッジとは、人の心理特性に沿って望ましい行動をしたくなるように促す設計のこと。この連載では、3人の医療職をめざす学生がナッジを学ぶ姿を通して、看護・介護に役立つヒントを示します。

 

 

タイミング次第で行動は変わる

 

竹林 正樹

たけばやし まさき

 

青森大学 客員教授/行動経済学研究者

 

 

竹林 人はストレスがたまった状態では自暴自棄な判断をしやすく、逆に、リラックスした状態では合理的な判断ができるものです。相手の最適なタイミングを見計らって行動を促す手法が「Timelyナッジ」です。Timelyナッジを活用するためのポイントを3つ紹介します。

 

ポイントその1:行動を促すタイミング

 

竹林 金田君が社会人になったと想定します。職場の人に「健康づくりに向けた動画を作成したので見てください」と一斉メールするとしたら、A朝9時、B正午、C夕方5時のうち、いつがよいでしょうか?

 

金田 いつ送っても同じだと思います!

 

竹林 受け取るタイミングによってその後の行動が変わる可能性があります。効果的なナッジを設計するには、相手がメールを受け取ってから動画を視聴するまでの行動(図)と離脱ポイントを考えることから始めます。

 

まずは、A(朝9時)の場合を考えます。図の③まではスムーズにいくとしても、まわりの人が仕事をしている中で、1人で動画を視聴するのはハードルが高く、④に至らない可能性があります。

 

城戸 そうなってしまうと、そのまま忘れ去られますよね(笑)。

 

竹林 A(朝9時)と同様にC(夕方5時)の場合も動画を視聴する前に離脱ポイントがあります。これに対してB(正午)は職場の昼休みであることが多く、メールをすぐに開けて動画を視聴しやすいタイミングと考えられます。ですから、仮に朝一番に完成したとしても、送信は正午まで待ったほうがよさそうです。

 

 

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2023年2月号)