SPECIAL INTERVIEW  “傷”だけではなく“人”を看て、 その人らしさを大切にしたケアを 『エンド・オブ・ライフ期における皮膚障害のケア』が刊行!

祖父江 正代さん

(そぶえ・まさよ)

 

JA愛知厚生連江南厚生病院 看護管理室/

緩和ケアセンタージェネラルマネジャー

 

がん看護専門看護師/皮膚・排泄ケア認定看護師

1997年岐阜県立岐阜病院(現:岐阜県総合医療センター)に入職。その後、2007年名古屋大学大学院医学系研究科博士前期課程を修了し、JA愛知厚生連昭和病院(現:江南厚生病院)勤務。現在に至る。1997年日本看護協会認定看護師教育課程WOC看護コース修了、皮膚・排泄ケア認定看護師資格取得。2008年がん看護専門看護師資格取得。

 

質の高いエンド・オブ・ライフを実現するためには、その人の価値観や生活習慣について知り、最善のケアを考えていく必要があります。「その人らしさ」を大切にした皮膚障害のケアをどう実践していくのか。新刊『エンド・オブ・ライフ期における皮膚障害のケア』の編者である祖父江正代さんに、本書の読みどころについてうかがいました。

 

■価値観や生活習慣を知り、最善のケアを考える

 

—皮膚障害のケアの中でも、エンド・オブ・ライフ期をテーマとされた経緯を教えてください。

 

エンド・オブ・ライフ期は皮膚障害の発生リスクが高くなりますが、皮膚障害予防・発生後ケアに必要となる体位変換や処置時の体位、処置そのものは苦痛を伴います。エンド・オブ・ライフ期では、その疾患によるさまざまな苦痛が出現するため、一歩踏み込んだケアができなかったり、強い苦痛を目の前にすると身構えてしまいがちです。この時期では皮膚障害の治癒よりも安楽を優先する考え方は間違っていませんが、実際には患者さんの苦痛を緩和するためにできることがたくさんあるのです。そうしたケアを伝えたいと思ったのが、本書を出したきっかけです。

 

—エンド・オブ・ライフ期の皮膚障害のケアでは、特にどのような視点が必要なのでしょうか。

 

患者さんがいま何に困っているのか、何を求めているかを知り、それに対して何ができるのかを考えること、つまり「“傷”だけではなく“人”を看る」という視点です。

緩和ケアでは、苦痛の緩和とその人らしく生きることを大きな目標としています。その人らしさはそれぞれなので、医療者が「この患者さんはこうだろう」と思ってやることが必ずしもご本人にとってよいこととは限りません。そのため、患者さんの生活習慣や価値観を聞き取りながら、一緒に最善のケアを考えていくことが必要となります。

例えば「朝10時ごろにコーヒーを飲む」「昼からはこのテレビ番組を見る」といった習慣があったとします。医療者の都合で皮膚障害のケアをこの時間に行ったり、痛みを伴う処置をその前に行ったら、患者さんの生活習慣で大事にしてきたことができなくなってしまいます。患者さんには本当にいろいろなストーリーがあり、大事にされていることも違うので、その視点を皮膚障害のケアでも取り入れたいと思いました。

 

■実際の患者をイメージできる内容構成

 

—本書の読みどころを紹介していただけますか。

 

第1章はエンド・オブ・ライフ期の患者さんと家族の心身の特徴について解説しています。がん・非がんの経過や特徴、トータルペイン(全人的苦痛)と必要なケアについて理解が深まると思います。

第2章は、意思決定支援のためのACP(アドバンス・ケア・プランニング)について解説しています。

第3章は、エンド・オブ・ライフ期の皮膚障害のケアで起こり得る倫理的ジレンマとその解決方法がテーマです。医療者が考える最善と患者さんが考える最善は必ずしも同じではありません。倫理的ジレンマを解決するときにはどちらか一方を選択しがちですが、できるだけ天秤が釣り合うように検討する方法を解説しています。ここでもACPとSDM(協働〈共有〉意思決定)が重要になります。

第4章はエンド・オブ・ライフ期に起こりやすい皮膚障害とケアの基礎知識について解説しています。

第5章は「がん・肝硬変・肝不全」「心不全・慢性呼吸器疾患」「脳卒中」「認知症・老衰」の疾患別に、エンド・オブ・ライフ期の特徴的な症状と皮膚障害のケアを紹介しています。事例では生活習慣や価値観を踏まえた目標設定やリスクアセスメント、倫理的視点に基づいたケアを紹介しています。患者さんのトータルペインを図で示し、仮名ですが身近な名前を付けるなど、「人を看るケア」を意識した構成になっており、実際の患者さんをイメージしながら読んでいただければと思います。

どの章もそれぞれの専門家の方に、知識と経験を基にご執筆いただきました。

 

■ケアの楽しさを感じ取ってほしい

 

—最後に読者へのメッセージをお願いします。

 

「自分のケアで患者さんを傷つけてしまったらどうしよう」という思いはいつも看護師にあると思います。患者さんから「痛いから触らないで。体の向きを変えないで」と言われたときにすっと引き下がってしまうことはありますし、私もそうでした。

でも、患者さんも決して動きたくないわけではなく、「動きたいけど動けない」「本当はこうしたい」という思いをもっています。エンド・オブ・ライフ期はその人らしさがだんだん失われていく時期ではありますが、ケアの工夫によってその人らしさを取り戻す機会もあります。皮膚障害のケアとして体位変換が必要だから行うのではなく、その人の「動くとつらくなる」ことに寄り添い、体動時のつらさを和らげる、生活の幅を広げる視点でかかわることが大切だと思っています。

どんなふうに痛いのか、どうやって動かしたら痛くないのかを考えて、チームでディスカッションしながらケアを実践していくことは楽しいですね。そうした楽しさを本書から感じ取っていただき、従来のケアから一歩踏み出す勇気をもっていただければうれしいです。

 

【本書を動画で紹介!】

編者・祖父江正代さんが本書の内容とポイントを語ります。

ぜひご覧ください!

 

 

 

 

 

新刊情報

エンド・オブ・ライフ期における

皮膚障害のケア

トータルペインを増強させないケアの工夫

 

祖父江 正代 編

●B5判/272ページ

●定価4290円

(本体3900円+税10%)

ISBN 978-4-8180-2338-3

日本看護協会出版会

(TEL:0436-23-3271)

 

 

 

 

 

 

 

[主な内容]

第1章 エンド・オブ・ライフ期における患者および家族の心身の特徴とケア

第2章 エンド・オブ・ライフ期のアドバンス・ケア・プランニング

第3章 エンド・オブ・ライフ期の皮膚障害に対する倫理的視点に基づいたケア

第4章 エンド・オブ・ライフ期に起こりやすい皮膚障害とケア

第5章 疾患別にみるエンド・オブ・ライフ期の皮膚障害に対する予防と発生後ケア

PartⅠ がん・肝硬変・肝不全/PartⅡ 心不全・慢性呼吸器疾患/PartⅢ 脳卒中/PartⅣ 認知症・老衰

 

看護2021年10月号より

 

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