評者:吉田 澄恵(東京女子医科大学看護学部准教授)
とかく看護職は、現場で遭遇する「問題」への「答」というものを書物に求めるのではないだろうか。しかし、本書は「社会学からのアプローチ」である。社会学は、人々が当たり前と見ている物事について、それを捉え直す視点をプレゼントしてくれる学問だと思う。
だから、本書を読むと、私たちが現場で「チーム医療」という言葉を使いながら、“心通じる”とか、“話が通じない”という気持ちになる状況が、なるほどとわかる。それも実にシンプルな「専門性志向」「患者志向」「職種構成志向」「協働志向」という4要素だけで。しかも、その説明がかなりリッチだ。そして、だからこそ、むしろはっきりと、「チーム医療」という言葉を使っても、本当は何も変わらないかもしれないという事実をも突きつけられる。「答」はないことも。
初版(2003年)の時、著者は、社会学者として、チーム医療を説明する視点を見つけたから、これで考えれば意見交換しやすくなりませんかと私たちに問いかけていたと思う。でも、今回は違う。社会学者として「チーム医療というものがこんな風に見えるけど、本当に善い医療にしていくにはどうしたらいいか。一緒に考えよう」と本気でメッセージしている。
初版以前より著者と深い交わりのある私には、彼女の「研究者としての覚悟」が伝わってくる。チーム医療は、医療者だけでなし得るものではない。一緒に考え実現しよう、と私も覚悟を決めた一冊である。
-「看護」2012年9月号より –