大学教授から転身し「らふえる訪問看護ステーション」を開設。10年を経た今、訪問看護の未来を見すえて管理者としての思い・考えを語っていただきます。
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3.11を忘れない
林 啓子
株式会社らふえる 代表取締役
らふえる訪問看護ステーション 管理者
一般社団法人茨城県訪問看護事業協議会 会長
とっさの行動が生死を分ける
今年は新年早々、能登半島で最大震度7の地震と、津波が発生しました。そして、東日本大震災から13回目の3.11がめぐってきます。あの日、私は筑波大学の研究棟5階の部屋にいて、経験したことのない大きな揺れに、慌てて廊下に飛び出し、エレベーターホールの太い柱にしがみつきました。そこが安全だと思ったのは、その数週間前にニュージーランドで起こった地震(日本の留学生が何人も犠牲になりました)で、建物は倒壊したもののエレベーターだけが直立して残っていた映像が脳裏をよぎったからです。
幸い私がいた建物は無事でしたが、危険を感じたとき、とっさの行動が生死を分けると言っても過言ではありません。
緊急事態が起きたとき、誰しもがとっさに危機回避行動をとります。脳内の大脳辺縁系(海馬や扁桃体があり、記憶を蓄積し情動に関連している部分)に危機回避行動の回路があると言われており、その行動は、本能的な反応とも言えます。しかし、本能と言えどもシミュレーションによって適切な行動がとれるようになることは可能です。