医療分野でのメタバースの活用
梛野 健
順天堂大学医学部眼科学講座
順天堂大学医学部病院管理学研究室
順天堂大学大学院医学研究科デジタル医療講座
猪俣 武範
順天堂大学医学部眼科学講座 准教授
順天堂大学医学部病院管理学研究室
順天堂大学大学院AIインキュベーションファーム 副センター長
服部 信孝
順天堂大学大学院AIインキュベーションファーム センター長
順天堂大学大学院メディカル・メタバース共同研究講座 研究科長
順天堂大学大学院医学研究科神経学 教授
近年、注目を集めているメタバース。医療分野においても、その活用が広がっています。仮想空間上でアバターを介してコミュニケーションが可能となることから、臨床現場でのオンライン診療の普及を後押しするのはもちろん、今後、新たな医療サービスも開発されることが予想されます。本稿では、日本IBM株式会社とともに「メディカル・メタバース共同研究講座」を展開する順天堂大学のメンバーに、メタバースの基本知識、医療分野における活用方法と導入事例、さらには「順天堂バーチャルホスピタル」について解説していただきます。
メタバースとは
メタバースとは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間であり、もう1つのデジタル世界と言われるものです。医療分野においても、さまざまな形で活用が始まっています。
メタバースという言葉は、超越性を意味する「メタ」と世界を意味する「ユニバース」を組み合わせた造語です。1992年にNeal Stephensonが発表した小説『Snow Crash』の中で初めて使われました。メタバース空間では、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、複合現実(MR)などの技術を用いることで、仮想空間の中に自分がいるかのような体験を得ることができます。また、メタバースは汎用的なプラットフォームであり、VRなどの映像技術だけではなく、人工知能(AI)やブロックチェーン、Non-fungible tokens(NFT)、Internet of Things (IoT)、ロボット工学といったさまざまな技術を融合することができるため、すでにあらゆる産業で活用されています。
医療分野では、診療や医学教育の補助、新たな疾患の治療法や予防法の開発、さらに医療システムの構築といった形で、医療業界にイノベーションをもたらすことが期待されています4)。