精神科病院の訪問看護室で働きながら、文筆活動を行う宮子あずささん。最近気になること、疑問に思うことなどを書きつづります
❸似て非なる者こそしゃくに障る
子どものいない人生
ある時期、訪問看護にうかがっていた利用者さんから軽い拒否を受けました。
私が勤める訪問看護室は、利用者ごとに訪問するスタッフを固定していません。いろいろな人と話すのが人間関係のトレーニングになりますし、関係が濃くなって妄想に取り込まれずに済むメリットがあります。
その日私は、ある女性の家を訪れ、30分ほどお話をうかがいました。女性は夫と2人暮らし。前情報では、テンションが若干高く、訪問に同席する夫を攻撃するとのこと。夫妻には子どもがいないのですが、それを夫のせいだと怒るのだそうです。以前一度訪問したときはややうつ的で、そこまでの元気はありませんでした。
私が訪問すると、女性は明らかにがっかりした表情をしました。「あぁ、宮子さんって、あなたね」。事前電話で名乗ったときには思い出せなかったのでしょう。
→続きは本誌で(コミュニティケア2021年3月号)