SPECIAL INTERVIEW すべての訪問看護師に必要な知識・技術を学べる『訪問看護基本テキスト 総論編・各論編』が発行!

佐藤 美穂子さん

公益財団法人 日本訪問看護財団
常務理事

 

 

日本訪問看護財団「訪問看護人材養成基礎カリキュラム」に準拠し、『最新 訪問看護研修テキスト』のリニューアル版となる『訪問看護基本テキスト 総論編・各論編』が発行されました。本書の監修・編著者である日本訪問看護財団常務理事の佐藤美穂子さんに、発行の経緯やねらい、内容構成、さらにこれから訪問看護師をめざす方々へのメッセージなどもいただきました。

 

 

――本書は長年「訪問看護師養成講習会」等で活用されてきた『最新 訪問看護研修テキスト』の後継版となりますが、今回のリニューアルに至るまでの経緯についてお聞かせください。

 

訪問看護師養成研修は日本看護協会が1985(昭和60)年にまとめた「訪問看護従事者のための教育プログラム」に基づくものが最初で、以降、保健医療福祉の動向を踏まえながら整備され、2004(平成16)年に「新たな訪問看護研修カリキュラム ステップ1・ステップ2」へと進化しました。このカリキュラムに基づき「訪問看護師養成講習会」が各都道府県協会によって開催され、その準拠テキストが本書の前身となる『最新 訪問看護研修テキストステップ1・ステップ2』でした。

 

日本訪問看護財団では、それらを踏襲しつつ、地域包括ケアシステムの推進など社会的動向を踏まえ、訪問看護の基本知識と技術の再構築をめざして、学習内容、受講対象者の要件、研修方法、実習期間・場所、実習指導者の要件などについて検討し、2017(平成29)年3月に「訪問看護人材養成基礎カリキュラム」を新たに策定しました。本書はこの新カリキュラムに沿ったものとなっています。

 

――本書の特長や内容構成はどのようになっているのでしょうか?

 

本書は、すべての訪問看護師に必要な知識と技術を網羅しており、これから訪問看護を始めようとする方やまだ従事して間もない方にとっては必携書といえるでしょう。「訪問看護師養成講習会」ではもちろん、当財団の「訪問看護eラーニング」などの補助教材としても最適です。また、将来訪問看護師をめざす新卒者や看護学生、さらに他の関係職種の方々にも、訪問看護の共通理解を深めるためにぜひおすすめしたいですし、看護基礎教育のテキストとしても活用いただきたいと思います。

 

全体構成として、社会的動向や訪問看護のニーズを反映し、より優先度の高い科目や項目から学習できるように工夫され、新カリキュラムの「Ⅰ 訪問看護概論」「Ⅱ 在宅ケアシステム論」「Ⅲ リスクマネジメント論」「Ⅳ 訪問看護対象論」「Ⅴ 訪問看護展開論」を「総論編」、「Ⅵ 訪問看護技術論」を「各論編」として2巻にまとめました。

 

「総論編」では、訪問看護の役割や機能、関連する法制度や倫理的課題、訪問看護ステーションの開設・運営の基礎を踏まえた上で、地域包括ケアシステムや多職種連携、在宅移行支援、またリスクマネジメント論の観点から医療安全の概念や個人情報管理、災害対応などについて詳述しています。

 

一方「各論編」では、「訪問看護展開のための知識・技術」「医療処置別の知識・技術」「対象別の知識・技術」を3本柱に、療養生活の支援や最新のエビデンスに基づく医療処置、がん看護、認知症ケア、医療的ケア児へのケア、エンドオブライフケアなど、実践の場で必要とされる内容を充実させました。

 

――訪問看護の人材育成はますます重要になっていきますが、これからの訪問看護師にはどのようなことが求められるでしょうか?

 

現在、看護基礎教育ですべての看護学生が「在宅看護論」を修得し、新卒で訪問看護の現場に飛び込むケースも出てきていますが、今後さらに訪問看護師を増やし、サービスの質を高めるためには、在宅看護過程の展開、在宅での看護技術、家族支援や多職種協働などを学ぶ現任研修の充実が求められます。

 

訪問看護師は乳幼児から高齢者まで、あらゆる疾病や障がいのある人の健康と生活支援に視点を置き、予防から看取りまで、ケアのマネジメントを行いながら看護サービスを提供します。さらに、幅広い視野で地域の看護ニーズを把握し、地域ケア力を高めるために多職種とつながり、訪問看護ステーションの利用者のみならず地域住民全体を見守る看護師としての役割も求められます。そのためには、常に社会的動向を見極めながら学習を継続し、研鑽を積んでいく必要があります。

 

――最後に、これから訪問看護師をめざす方々に向けてメッセージをお願いできますか。

 

病院の看護も訪問看護もQOLの向上と自立支援を目標に提供されるサービスですが、訪問看護は病院と違って人々の住まいで提供されます。そこで、訪問看護師は利用者の希望や思いを聴き、心身の状況・介護状況・環境などをアセスメントし、本人の持っている力を見つけて引き出し、発揮していただくようにケアを進めます。本人がしたいことを自分で決め、できる限り本人の力で日常生活が穏やかに過ごせるように予防的視点で支援します。まさに看護の原点を実践するのが訪問看護です。単独訪問がほとんどですが、訪問看護ステーションには仲間がいます。一緒に課題を考えて助言し合いながら、同行訪問などではしっかり応援してくれるでしょう。初めてでも大丈夫です。思い切って一歩踏み出してみましょう。

 

人々の人生に寄り添う訪問看護は知識・技術だけでなく、看護師としての人となりも含め、利用者から直接評価を受け、そのことが手ごたえとやりがいにつながります。きっとあなたの人生を豊かにしてくれる生涯の仕事になるはずです。

 


 

「訪問看護基本テキスト 総論編・各論編」

 

●監修

公益財団法人 日本訪問看護財団
●編集

柏木聖代・沼田美幸・清崎由美子・廣岡幹子・佐藤美穂子・
安藤眞知子・平原優美・小沼絵理
●発行

日本看護協会出版会(TEL:0436-23-3271)

 

[総論編]
●B5判 288ページ
●定価(本体3200円+税)
ISBN 978-4-8180-2133-4

 

[主な内容]

Ⅰ 訪問看護概論
Ⅱ 在宅ケアシステム論
Ⅲ リスクマネジメント論
Ⅳ 訪問看護対象論
Ⅴ 訪問看護展開論

 

 

 

 

 

[各論編]

●B5判 664ページ
●定価(本体6800円+税)
ISBN 978-4-8180-2134-1

 

[主な内容]
Ⅰ 訪問看護展開のための

知識・技術
Ⅱ 医療処置別の知識・技術
Ⅲ 対象別の知識・技術