『看護のなかの出会い』の著者、菊地多嘉子先生のご紹介

『看護のなかの出会い』の著者、菊地多嘉子先生の紹介

 
 

新刊『看護のなかの出会い』の著者・菊地多嘉子先生は、医学部を卒業して医師になったのですが、医師の道に進まず修道会に入り、その後今日まで、修道女として教育と信仰の道を歩んでこられました。なぜ医師の道を歩まずに修道女になったのか、自らの道を見出して、他者のために生きていくとはどういうことなのか、先生に伺いました。

 

 

自分の道に徹することの大切さ

 

私がどうして医者になったのか、その後なぜ信仰と教育の道を歩むことになったのか、簡単にお話ししたいと思います。

 

10歳の時の決心

一番最初のきっかけは、10歳の頃にさかのぼります。今も覚えておりますが、10歳の時、遠い親戚の方の所に何かを持って行くように言われて、家を出ました。一度行ったことのある道だったのですけれども、いつのまにか迷いこんで、あまり見たことのない──昔は長屋という家があったんですね。何軒も何軒も同じ家が。貧しい、貧しい所です──そこに入りこんでしまいました。夏のことでしたので、家の中がまるみえでした。

 

すると、ある家に、蚊帳をつって、中で寝ていた病人がいたのです。私は生れてはじめてそういう所に入って、ちょっと怖くなりかけていたときでしたけれど、蚊帳の中に寝ている病人の姿をぼんやりと見たときに、本当に胸を打たれました。その瞬間に、私は絶対に医者になろう、貧しい人のために働こう、と決心しました。そして家に帰って、たぶん、父に話したかもしれませんが……父は喜んだと思います。小さいころから体力も十分でなかったし、病気がちだったのですが、この日の決心は絶対に変わりませんでした。そして、あらゆる困難を突破して、やっと、医学部の学生になりました。 続きを読む…

CC2015年9月号掲載【患者中心の面談と対話技法 実践力を育む現場ベースの教育 その2】の紹介

〈コミュニティケア探訪・No.38〉
【患者中心の面談と対話技法 実践力を育む現場ベースの教育
イギリス・リーズ市郊外の日本人家庭医療専門医

――澤憲明さん その2】

 

文と写真・村上 紀美子(医療ジャーナリスト)
この連載がスタートしてから7年目。日本は九州から北海道まで、海外はイギリス、ドイツ、デンマークに香港と、コミュニティケアの現場の生き生きしたうねりや、尊敬する方々のチャレンジをご紹介できて幸せでした。最終回まであと1回です。
mkimiko@mbf.nifty.com

 

患者さんの全科診療の医療面と心理面、さらに家族関係・暮らし・仕事などの社会面も含めて全人的に、多職種チームで継続的にみていくのがイギリスの家庭医。その技や知恵は、日本の地域ケアにかかわる職種にも参考になりそうです。7月号に引き続き、澤憲明さんに話を聞きました。

 

実務密着マンツーマン教育

 

家庭医の現場実践能力は、どこでどのように育まれるのか? それは研修医のときの、臨床現場で実務に密着した指導医のマンツーマンによる教育の賜物。家庭医が専門教育で学ぶことの一端をみていきましょう。 続きを読む…

CC2015年7月号掲載【生活を支える“社会的活動の処方”プライマリ・ケアの特効薬イギリス・リーズ市郊外の日本人家庭医療専門医】の紹介

〈コミュニティケア探訪・No.37〉
【生活を支える“社会的活動の処方”プライマリ・ケアの特効薬

イギリス・リーズ市郊外の日本人家庭医療専門医――澤憲明さん】

 

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「暮らしの保健室」での勉強会の様子。
2014年5月の勉強会には、岩手県一関市の藤沢病院院長・佐藤元美さんも日帰り参加。佐藤さんの「社会的活動の処方を澤さんに詳しく聴きたい」という一言からこの日の勉強会となった。
写真右から佐藤さん、澤さん

 

文と写真・村上 紀美子(医療ジャーナリスト)
イギリスから日本に旅行中のマギーズセンターの利用者さんと交流しました。日本でも必要な相談支援だと痛感。ぜひみんなの力を集めてつくりませんか? 7月13日(月)の夜に東京の八芳園でチャリティーパーティーが開かれます。詳細はマギーズ東京HP(http://maggiestokyo.org/)へ。

「家庭医」や「総合診療医」が、日本でも重視されてきました。家庭医療が根付くイギリスで家庭医として働く澤憲明さんは、患者さんの生活を支えるのに“社会的活動の処方”が役立つと言います。日本でも参考になりそうです。2014年1月号の記事も併せてご覧ください。

イギリスの医学部での研修で、家庭医の診察の様子を見た瞬間、澤さんは「患者さんの近くで健康と幸福に貢献できるのは、これだ!」と確信。「家庭医の仕事が大好きで、天職というか、もう病院には戻れない」そうです。

 

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訪問看護ステーション・高齢者ケア施設・診療所で活躍する「専門性の高いナース」のワザって?

『コミュニティケア』2015年6月臨時増刊号

『在宅・施設の“看護力”向上をめざして!

地域で生きる“専門看護師・認定看護師”のワザ』

 

病院に対して、いわゆる“地域”という現場である、訪問看護ステーション・高齢者ケア施設・診療所で活躍する「専門看護師」「認定看護師」など“専門性の高いナース”25人からの熱いメッセージが届きました!

 

CC1506臨増表紙

「病院から在宅へ」の流れが加速する中、高齢者ケア施設も含めた“地域”に飛び出した専門看護師(CNS)と認定看護師(CN)がいます。CNS・CNの9割が病院に所属する現状において、

「なぜ病院ではなく“地域”で働くことを決めたのか」

「“地域”ならではの看護のやりがい、楽しさとは?」

「CNS・CNだからこそ発揮できる看護のワザは何か?」

などが熱く語られます。執筆者は、

 

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CC2015年5月号掲載【外国人を含めた包括的な社会サポート 産後ケア・子ども・言葉―ドイツのある街にて】の紹介

〈コミュニティケア探訪・No.36〉
【外国人を含めた包括的な社会サポート

産後ケア・子ども・言葉―ドイツのある街にて

ドイツ語教室 講師――ウタ・ハーマイスターさん】

 

 

文・村上 紀美子(医療ジャーナリスト)
2012年まで暮らしていたドイツでの3年間を振り返ると、いかに多くの人にお世話になっていたかと感謝あるのみ。そして今、日本で見かける外国の人たちが何か困っていないか、日本人と交流できているか、声をかけたくなります。mkimiko@mbf.nifty.com

“地域包括ケア”が盛んに議論されています。健康な暮らしを包括的にサポートするには、多種多様な活動が必要です。それも、外国から移り住んだ人が多いと状況はさらに複雑。外国人はどんなサポートが必要なのでしょう。ドイツで私が外国人として暮らした経験を含めて考えます。
※ドイツ語通訳:内田元子さん

日本は人口減少の時代を迎え、外国人の移住の受け入れが話題となり、また観光で外国から来る旅人も増えています。多国籍の人が一緒にいる社会でお互いに折り合いをつけ、余計な摩擦やトラブルを避ける知恵を考えておきたいところです。 続きを読む…