年2回発行の『家族看護』のバックナンバー(1〜16号)から「周産期」「在宅」「子ども」「終末期」などの6つのテーマで論文を厳選し、再編集した『家族看護選書 全6巻』が発刊となりました。各領域で関心の高いテーマを収載した、各巻の読みどころについて紹介します。
年2回発行の『家族看護』のバックナンバー(1〜16号)から「周産期」「在宅」「子ども」「終末期」などの6つのテーマで論文を厳選し、再編集した『家族看護選書 全6巻』が発刊となりました。各領域で関心の高いテーマを収載した、各巻の読みどころについて紹介します。
評者:佐藤 エキ子(聖路加国際病院副院長・看護部長)
看護とは何か。看護師は何をする人か。本質をあらためて考える究極の指南書
看護職に限らず、医療サービスに携わる医師、コメディカル、介護職の究極の指南書である。
本書は、3著者それぞれのメッセージと鼎談からなっている。鼎談は東日本大震災の2か月後に行われており、自ら被災地に立った日野原氏、川島氏の臨場感ある報告で始まる。折しも、震災後1年数か月を経てようやく石巻の仮設住宅の一角に診療所がオープンしたという報道に接したが、この間にも自ら落命した被災者は少なくない。被災地でのケアはいまだ渦中なのであり、被災者への継続したケアの必要性を強く説く両氏のことばが重く響く。治療と延命に傾斜してきた医療に対して日野原氏は、「日々の生活がその人らしく、健康で、豊かであり、生きがいを感じられることを約束するのが、あるべき医療である」と語る。震災を経験したことによって、医療本来の使命が浮き彫りになったといえよう。
評者:濱田 真由美(日本赤十字看護大学大学院博士課程)
看護独自の質的研究に関するテキストとなることを目指した本書では、本文中に引用されている研究が看護領域のものであり、看護の世界に身を置く読者にとっては研究課題と研究方法とのつながりがイメージしやすい。さらに、日本語版には1章と2章に「フォローアップ・ノート」が設けられ、訳者らによる解説によって読者の理解が深まるよう、工夫されている点も嬉しい。
評者:鈴木 恵美子(横浜メディカルグループ看護部老人保健施設レストア川崎看護部長)
認知症を巡る論は、各方面の有識者により議論されているところであるが、現在の名称に至る前は「痴呆」と呼ばれていた。「痴呆」という用語が侮蔑的な意味合いを含んでいることや、誤解や偏見の解消を図るとの考えから検討が行われ、2004年12月に「認知症」へ呼称変更となった。
認知症の三大原因には、大きく分けてアルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症がある。本書は世界で初めてレビー小体型認知症を明らかにした小阪憲司先生が、わかりやすい内容で、認知症という病気を巡る歴史から医療・介護の新しいカタチについて知り得なかった情報、レビー小体という物質、パーキンソン病の位置づけなど鑑別しづらい疾患についても詳しく述べている。