NT2013年4月号の連載「楽しく読んじゃう 新★看護学事典」では、看護学事典2版で「組織文化」の解説を執筆してくださった稲田久美子先生(四国大学看護学部看護学科教授)からエッセイをおよせいただきました。
看護ケアを形づくるもの
「『組織文化』って何だろう? 『組織風土』と同じこと?」と、皆さん思っていないでしょうか?
組織文化とは、そこにいる人たちが長い年月をかけてつくり、無意識のうちに大切にし、無意識のうちに共有化しているもの、組織の中にいると決して気づかない、でも外から入って来た人にとってはとても奇異で不思議に思えるものです。
私が初めて「組織文化」を実感したのは、14年前、東京の病院から徳島の病院に移った時でした。
最初の驚きは、病棟の歓送迎会の席上、初めてお会いする医師から、「あなたの大学の同級生に○○というのがいるでしょう? その旦那は僕の高校の同級生なんです」と、と言われた時です。「なぜ、私の出身校や同級生を知っているの??」と、驚きのあまり目が点になっていると、「そんなこと、みんなが知っていますよ」と、さらりと言われたのでした。それはもう、東京の病院ではあり得ないことでした。そこでは、詳しく同僚のルーツに関心を持つ人などいなかったからです。
「組織文化」というのは、その組織の中で「当たり前」とされていることです。当たり前の関心、当たり前の価値、当たり前の会話、当たり前の行動、当たり前の習慣……。(続く)
★組織文化
組織という集団の中にある文化のこと。組織メンバーの行動や意思決定の前提であり、同じ組織が存続することを可能にしている慣性、心理的な境界である(看護学事典第2版より)。