2月号の特集テーマは「周術期ケア」。各病院で取り組みは進みつつあるけれど、まだまだ、手術室と病棟の相互の理解、連携には改善の余地がありそうです。
今回の特集では、主に手術室看護師の側から病棟看護師の方々が知っておくとケア向上につながるポイントを教えていただきました。
監修は、手術看護認定看護師の養成を行っている東京女子医科大学認定看護師教育センターの土蔵愛子先生と草柳かほる先生。各論の執筆者は全員、同センター卒業の手術看護認定看護師のみなさんです。
座談会 周術期のケア継続
[司会者]草柳 かほる(東京女子医科大学看護学部看護職生涯発達学講師/認定看護師教育センター手術看護分野主任教員)
[参加者]徳山 薫(東京大学医学部附属病院手術部主任副看護師長/手術看護認定看護師)
石橋 まゆみ(昭和大学病院看護部手術室師長/周手術期術前外来担当)
塚原 大輔(日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程集中ケア学科専任教員)
富井 秋子(日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程集中ケア学科専任教員)
手術の流れと手術室看護師の役割
土藏 愛子(日本手術看護学会指名理事)
周術期ケア向上のコツ❶
患者・家族の安心のために
越塚 奈美(市立砺波総合病院/手術看護認定看護師)
■外来・病棟・手術室看護師は、患者が過ごす場所は異なっても、患者が必要とするケアを切れ目なく提供できるように情報を共有し、連携する
■病棟看護師は、術後の申し送りでは、麻酔方法や手術の経過だけでなく、危惧される合併症とその予防方法も引き継ぐ
■病棟看護師は、手術室看護師の情報とそのときの患者の情報を総合してアセスメントし、看護計画を立案する
患者の安楽のために
佐々木 久美子(日本医科大学武蔵小杉病院/手術看護認定看護師)
■患者の安楽を提供するためには、現在の手術医療の動向を理解し、正しい知識を持つことが大切
■高齢者はせん妄を起こしやすい。術前から術後せん妄発症のリスクを確認し、予防に向けて援助することが重要
■術前から不安軽減に向けた援助を行う
■術後経過に関して正しい情報提供を行う
■疼痛を緩和する援助を行う
周術期ケア向上のコツ❸
ドレーンの管理・術式の理解
伊藤 勲(飯塚病院/手術看護認定看護師)
■ドレーン排液からわかる合併症の兆候は多岐にわたる。早期発見のため、排液の色・量・性状・におい・周辺皮膚の状態に注意する
■術直後に起こりやすいのは低酸素血症と血圧低下。退室直前の患者状態、インアウトバランス、ドレーンの状態の引き継ぎが重要
■硬膜外麻酔で誤って硬膜穿刺をした場合、高確率で硬膜穿刺後頭痛を起こしやすい。申し送りがあった場合は注意が必要
■ドレーンは「自然な曲線で固定できているか」を確認する
周術期ケア向上のコツ❹
シバリング予防と体温管理
大西 真裕(順天堂大学医学部附属順天堂医院/手術看護認定看護師)
■患者にとってシバリングは“身体的苦痛”だけでなく“精神的苦痛”を与えるほどつらい症状
■術前から病棟と手術室が協働して体温管理を実践していくことは、シバリングの防止だけでなく、感染予防としても大切
■手術後は発熱しやすいが、患者自身は冷感を感じていることが多い。無駄な皮膚の露出を避け保温に努めることや、積極的な加温が大切
■“ベッドの暖かさ”は、患者に安心感を与える
周術期ケア向上のコツ❺
深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症予防のために
岡田 貴枝(昭和大学藤が丘病院/手術看護認定看護師)
■主な静脈血栓塞栓症の予防法は、①早期臥床および積極的な運動、 ②弾性ストッキング、③間欠的空気圧迫法、④薬物療法
■うっ血性心不全患者への理学療法は慎重に行う
■DVTおよびPTEの予防は、術前・術中・術後を通して一貫して行うことで、その効果を最大限に発揮できる
■病棟・手術室・ICU看護師は意図的な情報収集やアセスメントにより患者のリスクを知り、情報交換や看護の継続などで連携する
周術期ケア向上のコツ❻
医療過誤防止のために
手塚 信裕(大阪大学医学部附属病院/手術看護認定看護師)
■手術患者の誤認防止のため、手術患者1名に対して、外来・病棟看護師1名以上で搬送し、確実に手術室看護師に引き継ぐ
■手術室入室時に、患者自身にフルネームともう一つの識別手段、手術部位を言ってもらい、チームメンバー全員で確認する
■手術前の外来・病棟看護師からの申し送りでは、手術・麻酔同意書、特定生物由来製剤・輸血同意書、血液型報告書、手術安全チェックリストや持参品などを、声に出しながら指差し確認する
■手術室を出る前に、術後、患者に影響を及ぼす可能性のある問題を検討し、重要な情報の効率的な伝達を病棟看護師に行う
■各種誤認手術予防には患者を含めたチームの連携が必要
周術期ケア向上のコツ❼
感染を予防するために
須田 義恵(山形大学医学部附属病院/手術看護認定看護師)
■術前から感染リスクを考慮した患者指導を行う
■病棟・外来看護師も感染の影響因子を把握しておく
■シャワー浴・入浴は手術当日に行う
■「へそのごま」取りは手術前に病棟で行う
■手術前の除毛は避ける
■血糖コントロールに留意する
■手術創部は適切に保温し湿潤環境を維持する
周術期ケア向上のコツ❽
皮膚・神経障害を予防するために
徳山 薫(東京大学医学部附属病院/手術看護認定看護師)
■手術創以外の傷の観察ポイントは手術室看護師だけでなく病棟看護師にも知っておいてほしい
■手術室入室前にパッチテストを行うことで、医療用テープやフィルムドレッシング材、消毒薬による皮膚損傷を予防することができる
■患者がとる手術体位の特徴や、麻酔管理のために患者に装着されるモニター類、患者に用いられる医療機器の使用実態を知ることで、術後の医療機器関連圧迫創の早期発見に努める
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