評者:畠山 とも子(福島県立医科大学看護学部准教授)
本書は、楽しく、生き生きとした職場をつくるための指南書です。「フィッシュ!」とは文字どおり「魚」です。かつて元気なく、報酬だけのために1日をやり過ごしていたアメリカ・シアトルのある魚屋が、新たな経営管理を導入したことで活気ある楽しい職場に変化し、優良市場に変化したのです。その「フィッシュ!」哲学、①態度を選ぶ、②仕事を楽しむ、③人を喜ばせる、④相手に注意を向ける、という4つの原理が説明されています。
本書では、東京慈恵会医科大学附属病院で2004年から「フィッシュ!」哲学を導入し、見事に職場が生き生きと活性化したプロセスが紹介されています。よい病院になるためには、職員に信頼される病院になることが必要である、これは「フィッシュ!」哲学です。仕事が楽しいと感じる職員が増えれば、当然よいサービスが提供できます。同病院では部門を越えて組織全体で取り組んでいます。職員がチームのコミュニケーションが改善したと感じていることは大きな成果です。
「フィッシュ!」哲学は、私の専門の家族看護学と共通します。家族看護学において「家族の強みを発見する」ことは重要です。問題を発見することは容易にできますが、相手の強みを発見するためには、ちゃんと相手を見ることが必要です。 楽しく仕事ができる職場が増えるよう、多くの組織で「フィッシュ!」哲学を取り入れることを祈ります。私の働く大学にも……。
-「看護」2012年8月号より –