@wnursing せかいのつぶやき #03「ブログの記事にコメントが殺到!」

text by: Yumi Fukumoto

 

Twitterのタイムラインは、フォロー数が増えるにつれてその速さを増し、刻一刻と大河のごとくツイートが流れて行きます。広く伝えたい情報、独り言、ちょっとした挨拶や対話などなど、いろいろなツイートが、あっという間に現れては消えていきます。

 

そんな流れの中で、ふと目を引くツイートがありました。腫瘍専門看護師のTheresa Brownさん(@TheresaBrown)の投稿です。「医師と看護師とのコミュニケーションについて投稿した先日の<WELL>の記事に、コメントを232件いただきました。単純かもしれませんが、これほど大きな反響があるとは思いませんでした。コメントから多くを学びました」

 

<WELL>というのは、ニューヨーク・タイムズのサイト内にある健康カテゴリーのブログのタイトルで、Brownさんは投稿者の一人です。昨年10月13日のブログ記事が予想以上に注目を集めたようです。記事のタイトルは「看護師と医師の意見が合わない時」

 

記事のきっかけは、同僚の医師から「君が真剣に取り組んでも、患者はケアのことを私に聞きに来るんだ。君のところじゃない」と言われたことでした。彼女は当惑しますが、医師の発言の元となったある出来事を思い返してみたそうです。

 

「白血病の患者が、化学療法による治療の苦痛がひどくて受けられないと訴えた。治療のつらさに苦しんでいることは明らかで、続けるのは倫理的ではないと心配になった。患者はこの訴えの前にすでに腎不全とうっ血性心不全を起こしていたし、他のナース・メンバーも同じように心配したが、患者は医師の勧めで続けることに同意。その後ホスピスに移って亡くなった。化学療法のために痛みと膀胱出血が止まらなくなって間もなくだった」

 

彼女は、「患者が穏やかに最期を過ごす時間が奪われてしまった」と考えますが、同僚の医師は「末期がん患者の意思決定にアドバイスをするのは、全病歴を知っている医師が適任であり、結局は医師に責任がある。病棟看護師は患者の長い旅路の最後の一時期をほんのちょっと見るだけだ」という意見です。

 

彼女は自問します。「患者が医師を選び、看護師との出会いは“くじ運”みたいなものであることも事実だが、いつも医師の意見が優先されなければならないのか? 患者と医師の関係は、患者と看護師の関係よりも神聖なのか?」。

 

彼女は合併症併発率に関する研究や、看護師の配置率と患者回復の早さや入院期間との関係に言及しながら、「そうではない。看護師は医師よりも患者と長い時間を過ごし、患者は決して医師に見せない顔を看護師には見せ、不満を言うことも多い」と思いをめぐらせます。

 

その後、この議論を記事にしたいとその医師に話すと彼は同意し、お互いに対話が必要という点で意見は一致したのですが、今度は彼女の中に「あまりに患者の側に立ちすぎると間違いを犯すかもしれない」という疑問が生じたようです。

 

そして「看護師には、入院患者が安全でベストなケアを受けられるようにする義務があり、彼らへの責任が生じる。よい看護師は波風が立とうともメディカルスタッフと意見を共有したいものだ」と締めくくっています。

 

このブログ記事には、多数のコメント以外にも反響がありました。学生チャット(#NUR3563)主催者で看護師チャット(#RNchat)の常連でもある、サウスウエスト・バプテスト大学准教授のTerri Schmitt さん(@onlinenursing/チャット用:@NUR3563)は、チャットのトピックとして取り上げました。

 

「質問:Theresa Brownさんが最近書いたニューヨーク・タイムズの記事に関係がありますが、看護師は患者をどこまで支持すべき?」

 

メイヨークリニックのナース・リーダー、Dale Pfrimmerさん(@DalePfrimmer)も着目しました。「テレサさん、すばらしい記事でした。明日、安全な環境づくりに関するディスカッションで紹介します。すばらしい取り組みを続けてください」

 

ブログで応えてツイートした人もいます。著名な医師ブロガーであるKevin Phoさん(@KevinMD)は、「チームを基盤とした患者ケアにおける医師と患者の関係」と題する投稿記事の中で、彼女の問い(患者と医師の関係は患者と看護師の関係より優先されるのか?)にはっきりと「ノー」と言い「ケアは、家父長的なモデルからチームを基盤としたアプローチへと移行しつつある」「患者と医師がよい関係にあるかと尋ねるのではなく、患者とチームがよいパートナーシップを築いているかを知るほうが重要になってくる」と書いています。

 

また、ラジオ番組のエグゼクティブ・プロデューサーで登録看護師資格を持つBarbara Ficarra さん(@BarbaraFicarra)も、自身のブログ記事「医師と看護師がともに働く時」で、Kevin Phoさんのブログとともに引用しつつ、「患者のケアに責任があるのは他の職種も含めたチーム全員」「医師と看護師はいつも意見が合うとは限らないが、主導権争いをするのではなく、患者のためにプロフェッショナルとして協力すべきだ」と意見を述べています。

 

1人が投げかけた問いは、ブログの記事からツイートへ、それぞれのフォロアーや読者へ、そして医療現場の人々へと伝わって、多くの人が問題を深く考えるきっかけになったようですね。

 

 

149号, p.51, 2011.より。※リンク先は本誌掲載当時)

 


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