コミュニティケア夏号 特集2 報告②

専門性の深化は、特定領域の知識や技術を磨くことにとどまりません。神経難病に特化することで独自の価値を築き、地域の支援体制の充実にもつなげてきた取り組みを紹介します。

 

西尾 まり子 にしお まりこ

地域ケアステーション八千代・訪問看護ステーション

管理者

在宅ケア認定看護師

 

神経難病に特化した訪問看護で

価値と役割を深め続ける

 

当グループは大阪府堺市・和泉市に2拠点を構え、堺市全域をはじめ和泉市、狭山市、高石市など近隣エリアへの訪問看護を行っています。開設11年目を迎えた現在、看護師約40名、理学療法士12名、作業療法士5名、言語聴覚士3名、看護補助者7名、介護支援専門員4名、事務員8名、総勢約80名の多職種チームが日々活動しています。スタッフ一人ひとりの尽力により、今では多くの神経難病療養者を地域で支えられるようになったと自負しています。

 

独自の役割と価値は

神経難病療養者を支えること

 

大阪府は全国で最も訪問看護ステーション数が多い都道府県です。堺市は人口約80万人の政令指定都市であり、訪問看護ステーション数は年々増加し約250カ所あります。その中で地域の実情を踏まえ、これからどのような役割を持つステーションに価値があり必要とされるのかを考えました。最初の目標として「これでいいのだ! の地域ケア」(本人・家族が「これでよかった」と思えることを正解とする考え方)を掲げましたが、ターゲットが広すぎて手応えを感じられませんでした。

 

そこで、専門的な強みを全面的に出し、独自のスタイルを構築することで、他のステーションとの差別化をはかることが必要だと考えました。そのために難病看護師である自身が理想とする「神経難病療養者を地域で支えることができるステーション」を目標とし、専門性を磨き地域連携を構築し独自のサービスを追求していく方向性としました。

課題への取り組み

1. 機能強化型訪問看護ステーションの 運営・活動

まず、神経難病療養者を在宅で支援するためには、多職種の大規模ステーションが望まれるのではないかと考えました。その理由は、①神経難病の症状は個人差が大きく、経過に沿って細やかなケア内容の変更や工夫、精神的ケアが必要であるため多数でかかわらないと負担が大きい、②オンリーワンの多職種チームを構築して密な連携をタイムリーに行う必要がある、③地域の人材不足により必要なサービスが十分に利用できない場合がある、と考えたためです。

 

そのような考えの下、看護師・セラピストには神経難病特有の視点やケアを繰り返し経験できる相談・教育体制を構築しています。1年に1回八千代フェスを開催し、見本となる事例を検討し進むべき看護の方向性を共有しています。介護支援専門員も、介護保険・医療保険だけでなく障害や難病法に基づくケアプランの作成に精通したスタッフの育成を目標としています。

 

こうした大規模・機能強化型のステーション運営は、スタッフの多様な働き方の実現や経営の安定化にもつながっていると感じています。

 

2. こだわりのケアを手助けする看護補助者

看護補助者として活躍する7名は、訪問看護師の指導の下に療養生活上の世話など看護業務の補助を行います。利用者の許可を得て訪問看護師とケアを行った場合は医療請求も可能です。実際にあるケースは、人工呼吸器装着の利用者の体位変換や入浴介助、難病療養者特有の難しいこだわりのケア(1mm単位の調整が必要な四肢のポジショニングなど)の手助けです。看護補助者は経験が浅い看護師のフォロー役も担ってくれているため、ステーションの離職率の低下にもつながっています。

 

3. 外出支援

在宅療養が長期にわたると、外出の機会はどうしても限られてきます。医療機器が必要でリスクがあることで家族だけでは外出が難しい場合には、スタッフが同行し、近くの喫茶店や公園への散歩・花見など、希望に沿ってサポートしています。地域社会へ参加することによって本人に自信がつき、介護者ともども活力につながっているほか、外出の準備を通じて災害時の避難に必要な荷物を一緒に検討する機会にもなっています。支援を経験したスタッフは、生き生きとした療養者と家族を目の当たりにして難病看護の楽しさとやりがいを実感し、意欲も向上しています。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2026年夏号)