急性期病院における認知症ケアへの挑戦
島橋 誠 ● しまはし まこと
前 社会医療法人大雄会 総合大雄会病院
総合看護管理室/認知症看護認定看護師
[略歴]
病院勤務を経て、日本看護協会看護研修学校にて認知症看護認定看護師を育成。厚生労働省の認知症関連の研修やガイドラインの作成委員を務める。看護系大学での老年看護学講座講師を経て臨床現場に復帰。組織横断的に実践・指導・相談の役割を担う。認知症看護認定看護師、看護学博士。
急性期病院における認知症ケアには、①せん妄のハイリスク状態である、②疼痛管理に難渋する、③退院調整に時間を要し入院期間が長期化する、④不適切な早期退院が増加し結果として再入院を招く、などの課題があります。入院から在宅まで、「治し・支える医療」を提供するため、認知症患者の管理に不慣れと言われる急性期病院であっても、これからは認知症患者とその家族の支援に、より注力する必要があります。本稿では、これらの課題に対応するための社会医療法人大雄会総合大雄会病院(以下:当院)の取り組みを紹介します。
認知症対応力向上プロジェクト
当院では、2024年4月に多職種チームから成る認知症対応力向上プロジェクト(以下:本プロジェクト)を設置しました。本プロジェクトには、①認知症薬治療チーム、②入院対応チームの分科会があります。①は認知症治療の新薬であるレカネマブ治療について、②は入院から退院後の生活を見すえた認知症患者への対応について、月に1度の定例会で具体的に可視化して議論します。
本プロジェクトは、認知症の発症から人生の最終段階に至るプロセスを支援していくという、当院における挑戦の第1段階です。
身体拘束最小化チーム
2024年度診療報酬改定で、「身体的拘束の最小化」に取り組んでいるかどうかが、入院医療全般に厳しく問われることになりました。急性期・回復期・慢性期、すべての入院基本料の施設基準において「身体的拘束を最小化するための体制を整えること」が加わったのです。施設基準とは、看護配置のように「その病棟がまず守るべき、根本的な基準」であり、これを満たせなければ、診療報酬(入院料)が算定できない・減算されるなどのペナルティが科せられます。