【SPECIAL INTERVIEW】高齢者のナイトケア 生活の場を中心とした支援のポイントと実際

尾﨑 章子

東北大学大学院医学系研究科

保健学専攻 老年・在宅看護学分野 教授

 

千葉大学看護学部卒業、東京医科歯科大学大学院医学系研究科修士課程、同博士後期課程修了。東京都立保健科学大学看護学科講師、国立精神・神経センター精神保健研究所研究員、東邦大学看護学部教授を経て、現職

 

坪井 桂子

神戸市看護大学

健康生活看護学領域 老年看護学分野 教授

 

岡山県立大学大学院保健福祉学研究科看護学専攻修了、岐阜県立看護大学大学院博士後期課程修了。岡山大学医学部保健学科に勤務後、岐阜県立看護大学講師、岐阜県立看護大学准教授を経て、現職

 

高齢者の夜間のケア(ナイトケア)に焦点を当て、看護職等の人的リソースが限られた中でも適切に提供するために必要なケアのエッセンスを実践事例とともにまとめた『高齢者のナイトケア』を刊行しました。編著者のお2人にインタビューを行い、高齢者のナイトケアの実際と本書の発行経緯、概要と特徴などのほか、ナイトケアを担う看護職へのメッセージをいただきました。

 

■高齢者の夜間のケア(ナイトケア)の実際と本書の発行経緯についてお聞かせください

 

坪井:ナイトケアは、看護職や介護職などケアを提供する側の都合でケアを行っている実態が往々にしてあります。例えば、夜は眠るものという考え方もその1つでしょう。高齢になるにつれて、眠りは浅く短くなります。健康な高齢者であれば加齢による生理的な変化と受け止められます。このたび出版企画のお話をいただいて、あらためてナイトケアを必要とする高齢者も少なくない現状に着目し、新たな視点でケアを考える機会となるような書籍をめざすこととしました。

 

尾﨑:在宅では高齢者の夜間のケアを主に家族が担っているため、夜間の介護負担は在宅療養継続を左右する大きな要因となっています。在宅における睡眠薬の使用状況について調査を行ったところ、訪問看護師が転倒・転落のリスクについて伝えても、家族が(本人に)夜間は眠ってもらいたいため睡眠薬の使用を続けているといった実態がありました。そのように訪問看護師は、転倒・転落リスクの回避と家族の負担軽減との調整に苦慮していたのです。夜間には不眠だけでなく、さまざまな「問題」が表面化したり、増幅されたりします。そこで、夜間という環境を切り口にして、高齢者のニーズの実際とその対応に関する内容を1冊にまとめることで、在宅や施設で療養する高齢者のケアについて、ぜひ考えていただければと思いました。

 

■本書の概要と特徴について教えてください

 

尾﨑:本書は、施設や在宅も含め、主に「生活の場」における高齢者のナイトケアに着目した書籍です。夜間に見られる不眠、痛みの増強、水分補給、転倒・転落、暴力、離院などはケアを提供する側から「問題視」されがちです。しかし、当事者である高齢者の目線に立ってみると、それらは問題ではなく、ニーズの表出であり、ニーズが満たされていないために生じていることに気づかされます。なぜそのような事象が起こっているのか、視点や発想を転換することで対応(ケア)が見えてくると思います。

 

坪井:高齢者のナイトケアに関する類書はこれまでほとんどないと思います。本書でこだわったのは、当事者主体で暮らす生活の場からナイトケアのあり方を発信したいということでした。この当事者主体ということは、看護を行う上では当たり前のことですが、その当たり前が置き去りにされていないか、看護職があらためて見つめ直すきっかけを提示できればと考えました。

 

■これからのナイトケアに求められるのはどのようなことでしょうか?

 

坪井:ケアを提供する看護職の価値観やこれまでの考えに当てはめるのではなく、高齢者の多様な生活史や価値観に沿ったものとする工夫が必要です。看護の基本である対象者のニーズに沿ったケアを提供すること、そしてそのニーズが時代とともに変化していくことを念頭に、ケアの適切性を常に見直すことが求められます。本書には普遍的な内容も含まれていますが、時の経過に応じて刻々と変化していく可能性を認識しつつ、今後もアップデートしていくことが必要と考えています。

 

尾﨑:夜間のケアを担う看護職や介護職に対する管理者の支援も重要です。人的配置が極端に少なくなる病院や施設、利用者のオンコールを1人で担当する訪問看護ステーションでは、職員の身体的負担や自律的判断を行うことへの重責感は大きく、組織的な視点での解決が求められます。また、高齢者の特性を踏まえたケアが提供できる人材を育てていくこと、さらにはスタッフの働きやすい環境を整え処遇改善をはかることがケアの質の改善につながります。そのような管理者の役割は大変重要と考えます。

 

■最後に、ナイトケアを担う看護職に向けてメッセージをお願いします

 

尾﨑:夜間特有の環境の中、日中には現れない高齢者の姿や心に秘められた心情に触れることがあります。夜間だからこそわかること、できることがあるのです。ナイトケアを担う看護職の中にはシフトワークに従事している方も多いと思います。自身の健康や生活も大切にすることを忘れずに、高齢者の尊厳を守るナイトケアとは何か、1人ひとりの高齢者との出会いを大事にしてステキなケアを創出していただきたいと思います。

 

坪井:「疲れているのに眠れない」「心配なことがあって不眠になる」など高齢者の抱えている眠りの課題は多くあります。個々の高齢者が望む暮らしを実現するためにも、日中の活動と休息のバランスをとることは重要です。好きなことややりたいことを行うためにも睡眠によって心身を休ませることが大切です。その援助方法を共に探究していきましょう。そして、睡眠をはじめとした自身の価値観やこだわりを見直し、当事者主体のケアという看護の基本に立ち返り、さらに本書を新たなケアの創造のための契機にしていただければと思います。

 

高齢者のナイトケア

生活の場を中心とした支援のポイントと実際

 

尾﨑章子・坪井桂子 編著

B5判・164ページ

定価2860円

(本体2600円+税10%)

ISBN978-4-8180-2569-1

日本看護協会出版会

(TEL:0436-23-3271)

プロローグ 高齢者にとっての眠り

Ⅰ 高齢者にとっての夜

生活の場からみた夜/認知症高齢者の理解

Ⅱ ケアする人にとっての夜

ケアの場からみた夜/在宅ケア従事者が考えておくべきこと

Ⅲ 夜にはどのようなことが起こるのか

  ——高齢者のナイトケアの実際

Ⅳ 補 論

高齢者のリロケーション(生活の場の移行)に伴う留意点/看護職と他職種との連携・協働/管理者が考えておくべきこと

 

看護2023年7月号より

 

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