SPECIAL INTERVIEW ありったけの「足への想い」を込めて 9年ぶりの大改訂!~『新 はじめよう! フットケア』刊行

西田 壽代さん

(にしだ・ひさよ)

 

足のナースクリニック 代表

一般社団法人日本トータルフットマネジメント協会 会長

 

聖路加看護大学卒業後、聖路加国際病院、東京海上ベターライフサービス株式会社、駿河台日本大学病院を経て2010年に独立し、「足のナースクリニック」を開設。病院や高齢者施設、訪問看護ステーション等と提携し、フットケアやWOC分野におけるスタッフ教育や患者ケア、多職種連携・調整等を実施している。皮膚・排泄ケア認定看護師、保健師、介護支援専門員、救急救命士、日本フットケア・足病医学会評議員

 

「これだけ広範囲が網羅され、かゆいところに手が届く本はほかにない」など、高い評価を得ていた前書『はじめよう! フットケア[第3版]』が大改訂されました。監修・西田壽代氏が、足をみるときに「今、何が起きていて、何をすればよいのか」を症状別に理解するための観察やケアのポイントを整理。新たに動画も加わった充実の本書について、西田氏にうかがいました。

 

 

■さまざまなことを俯瞰できるようになって……

 

――『新 はじめよう! フットケア』が発刊されて2022年末には半年経過します。初めに今回“9年ぶり”に大改訂となった経緯を教えてください。

 

本書の前身となる『はじめよう! フットケア[第3版]』は2013年に刊行され、フットケアにかかわる多くの方に愛される書籍として、ご評価いただいていました。ところが、2016年に諸事情で[第3版]の発行を続けることができなくなる危機を迎えました。そのとき編集担当の方に「大改訂して、新たな本をつくりましょう!」と言っていただいたのに、すぐには動けませんでした。何度前を向こうと思っても何もできず、今まで以上の書を生み出せるイメージがまったくわかなかったのです。

 

そんな矢先、私は自分の一番大切なものを失いました。そして、ほどなくして『はじめよう! フットケア』が書籍になるきっかけとなった月刊誌『コミュニティケア』2005年10月臨時増刊号の編集担当の方が定年を迎えるという話をうかがいました。

 

「大切なものを失ったり、定年になったり、人間には終わりがある」……そんな当たり前のことを現実として立て続けに目の前に突き付けられたとき、私はようやく「生み出さなければいけない」ということに向き合えた気がしました。

 

それがきっかけで気持ちにスイッチが入りました。その途端、それまでの思いが溢れて、何年も進めることができなかった本書の企画が、嘘のように次々と浮かび上がり、骨格を組み上げていくことができたのです。年月が経ったことで、いろいろなことを俯瞰して見られるようになり、さらに内容に深みを増すことができたと思います。

 

■現場の多職種が一堂に会してフットケアを語る

 

――大改訂で最も重視したところは何ですか?

 

本書の執筆をお願いした方は、医師・看護師はじめフットケアにかかわる多業種・多職種の専門家60人以上です。そうそうたる執筆者の方々に原稿をお願いするにあたり、最も意識したのは、読者が「みてわかる」ということです。1つは、足をみる機会を多く持つ看護師やフットケア従事者の方が、みることから足に起こっている状況を紐解けるように「足の症状」別に辞書のように困ったら調べられること、そして、もう1つは「本」という静止したものから「動画」というコンテンツにつなぐことで、より臨床で実践しやすいようにすることでした。

 

そのため、私から無理難題をお願いした執筆者もいらっしゃいます。それでもお引き受けくださった方、また[第3版]での危機のことを知った上でご快諾いただいた方、日本トータルフットマネジメント協会(JTFA)の活動について初めて知ったにもかかわらずお力添えくださった方など、たくさんの執筆者の皆さまがお力添えくださいました。

 

おかげさまで、ありったけの「足への想い」を込めた、足のケアのバイブルとなる1冊を生み出すことができました。

 

――本書は「日本トータルフットマネジメント協会(JTFA)編」でもありますね。簡単に紹介していただけますか?

 

JTFAは、フットケアの正しい知識と技術を伝え広め、「医療」「介護」「福祉」「健康」「美容」分野の垣根を越えた連携や研究開発によって、より豊かなフットケアの環境づくりを行い、また、足から社会文化の発展に貢献することを目的に、2013年6月に、多業種の仲間と立ち上げました。

 

自分たちが進みたい方向性をもって発足したJTFA編の書籍として、本書が新たな出発をすることができたことを、心から嬉しく思います。

 

――では、本書の内容を簡単にご紹介ください。

 

本書は、フットケアの基本から爪・角質等のケア、マッサージ、リハビリテーション、そして心のケアまで、先に述べたように多職種・多業種の専門家から詳細な解説をいただきました。フットケアにかかわるあらゆる関係者が一堂に会してフットケアを語る本は他に類をみないと思います。

 

購入していただいた方からも「フットケアをするにあたり必要な内容がこの1冊に集約されています!」「気になったこと、どうしたらいいかと思ったところが探すと載っています。かゆいところに手が届く感じです」など、うれしい感想もたくさんいただいています。

 

さらに、本書の特典として16本もの動画をQRコードから見ることができます。まさに“読んで動画で学べる”内容になりました。今の時代、いつでもどこでも学習できることがとても大切なので、スマホ1本で見られる動画コンテンツは、どうしてもこの本をつくるときに組み込みたい内容でした。お忙しい中、これだけの質の高い動画を作製してくださった先生方には、本当に感謝しております。

 

――最後に購入してくれた方、購入してほしい方へメッセージをお願いします。

 

私にとって、本書は自分の命のピースをひとつずつパズルのように組み合わせ、つくりあげていったように思います。こうして生まれた本書が、フットケアをする方に寄り添い、フットケアに困っている方の道しるべとなり、長く愛される本になってほしいと思っています。

 

[第3版]の冒頭でも書きましたが、「足を満たす」と書いて「満足」となります。足から体を、そして心を満たしてくれるケアが、1人でも多くの方に提供されるよう願ってやみません。

 

書誌情報

新 はじめよう!フットケア

 

西田壽代/監修
日本トータルフットマネジメント協会/編
定価4,620円
(本体4,200円+税10%)
A4変型 352ページ
ISBN 978-4-8180-2523-3
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)

●主な内容

[序 章]ナースに求められるフットケア
[第1章]足の構造と働き、アセスメント
[第2章]足に起こる疾患・症状-その原因と対策・治療-
[第3章]知っておくべき成長・発達による変化
[第4章]フットケアに必要な検査の知識
[第5章]フットケアの実際

爪のケア/皮膚、肥厚した角質のケア/創傷と浮腫のケア/弾性ストッキング・弾性包帯、靴下/靴、インソールと免荷/疾患・症状別靴型装具・足底装具/足部機能を高める運動とケア/足の痛みと変形のケア・リフレクソロジー・東洋医学・フットケアと栄養管理/フットケアと生活支援/フットケアと心のケア/介護・福祉とフットケア/フットケアにおける衛生管理

[第6章]フットケアと院内連携・地域連携・災害医療
[第7章]よりよいフットケアに向けて

 

看護2022年12月号より

 

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