スペシャリストの実践知㉑

各分野のスペシャリストによる看護実践の過程から、困難事例への視点や日々の実践に役立つケア・コミュニケーションのポイント、スキルを学びます。

 

糖尿病

家族介護者の悩みに寄り添い
適切なサービスを提供する

今月のスペシャリスト:関屋 博子

 

 

 

千葉県にある新松戸中央総合病院を母体とする「医療法人財団明理会新松戸ロイヤル訪問看護ステーション」は現在、約80人の利用者がいます。そのうち糖尿病を持つ人の多くは、認知症を併発しています。このため、認知機能の低下により糖尿病療法の自己管理が困難となり、低血糖を起こすとさらに認知症の周辺症状が増強するという悪循環に陥ります。これにより、在宅療養の継続が難しくなることが少なくありません。

 

本稿では、認知症のある糖尿病療養者と家族への支援について報告します。

 

認知症を伴う糖尿病療養者のAさん

 

事例:Aさん/80代男性/要介護1
2型糖尿病・パーキンソン症候群・認知症・
高血圧症・狭心症・心房細動

 

Aさんは妻と2人暮らし。息子は他市に在住している。Aさんは10年ほど前に糖尿病と診断され、月1回、妻と一緒に総合病院に通院。妻の協力を得ながら、血糖降下薬の服薬と1日2回の速攻型インスリン注射、週1回のトルリシティの皮下注射による薬物療法を行っていた。

 

妻が下肢関節の変形・腰痛で重労働や長時間の立位保持が困難になってから、食事については宅配弁当を利用したり、Aさんが簡単な料理をつくったりしていた。それに対し、専業主婦である妻は申し訳ないという気持ちがあった。また、もともとAさんは宅配弁当を好まず、1日の食事摂取量を確保できていなかったことから、妻は「このままでは低血糖になってしまうのではないか」と悩みを抱えていた。そのため、夫の体調管理に関して相談できる場がほしいと考えていた。Aさんが転倒を繰り返すようになったことを契機に、ケアマネジャーに療養生活相談のできるサービスの利用を希望し、当ステーションが紹介された。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2022年6月号)