スペシャリストの実践知⑱

各分野のスペシャリストによる看護実践の過程から、困難事例への視点や日々の実践に役立つケア・コミュニケーションのポイント、スキルを学びます。

 

乳がん

本人の希望を引き出し

その人の価値観に沿った療養生活をめざす

今月のスペシャリスト:飛田 篤子

 

 

 

「ファミリー・ホスピス本郷台」は2016年に横浜市栄区に開設され、地域住民が住み慣れた地域でホスピス・緩和ケアを受けられる町づくりへの貢献をめざして活動しています。

 

当事業所は訪問看護ステーション、住宅型ホスピス、看護小規模多機型居宅介護(以下:看多機)施設を併設しています。これにより、利用者・家族の多様なニーズに応えるサービスを提供することが可能になっています。利用者は、主にがん終末期・神経難病・重度身体障害の人で、直近1年間(2020年10月〜2021年9月)の看取り実績は、在宅3件・住宅型ホスピス58件・看多機11件です。

 

本稿では、患者と医療職との間で予後に関する認識のずれがある中で、回復の見込めない乳がん患者への終末期ケアの実際を紹介します。

 

外来で化学療法を受けるAさん

 

事例:Aさん/70代女性/乳がん/要介護2

 

Aさんは1人暮らし。エレベーターのない団地の5階に住んでいる。7年前に乳がんと診断され、乳房部分切除術・術後化学療法・ホルモン療法が行われた。さらに、2年前に脳転移が見つかりガンマナイフが実施されたが、その治療後に症候性てんかん発作(顔・手のけいれん)が出現。そのため、抗けいれん剤が定期的に処方されている。また、このころから生活支援を目的に週1回の訪問介護の利用を開始。Aさんは「近くに住んでいる娘には負担をかけたくない」と語り、できるだけ娘に頼らずに生活していた。

 

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2022年3月号)