SPECIAL INTERVIEW 『創傷ケアワークブック スキン-テア/褥瘡/下肢潰瘍』 創傷のアセスメント力&ケア力を高めたい皆さんへ

田中 秀子さん

(たなか・ひでこ)

淑徳大学看護栄養学部 教授

 

Rosewell Park Memorial Institute(New York)ETスクール、東洋大学社会学部、宮城県立宮城大学大学院看護学研究科看護学専攻(修士課程)を卒業。1997年日本看護協会認定部WOC看護(現 日本看護協会看護研修学校皮膚・排泄ケア)学科専任教員を経て、2007年より現職。2015〜2019年淑徳大学看護栄養学部学部長。2017年より一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会理事長。

 

2014年刊行の『褥瘡ケアステップアップワークブック』が、「スキン-テア」「下肢潰瘍」を加え、「創傷ケア」の学びの書として生まれ変わりました。「全身の状態も考慮した創傷の的確なアセスメント力とケア力」を身につけるためのオールカラー“学習書”の誕生です。監修の田中秀子先生に、本書のおすすめポイントをうかがいました。

■高評価だったワークブック形式はそのままに

 

—旧版が発行されて5年、ページ数が80ページ近く増え、さらにレイアウトもギュッと詰まって、学ぶべきことがいっぱい追加されましたね。

 

はい、今回はとても大きな改訂を行いました。「褥瘡」だけでなく、「スキン-テア」と「下肢潰瘍」まで対象を広げています。現場の看護師が、多くの症例をもとにアセスメントし、計画立案ができ、ケアができるようになるところまで内容を盛り込みました。NPPVマスクの装着などでCOVID-19の治療においても問題になっている「医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)」と「褥瘡」との違いも解説し、そのケア方法についても掲載しています。

また「スキン-テア」は、高齢者の増加に伴い、どこの施設でも増えています。実は簡単な予防策で防げるのですが、現実にはそれができていません。さらに「下肢潰瘍」については、症例を見てもケアの仕方がわからない例や、違うケア方法によって悪化してしまう症例など、やはり知識がないことから起きる問題も見逃せません。本書は、これらの現場での問題が少しでも解決できることを願って作成しました。

 

—本書は、旧版同様に書き込みスペースのあるワークブック形式ですが、そのねらいは?

 

旧版は「褥瘡ケアに特化したアセスメントの仕方が学べる書」として、単に読んで理解するものではなく、問題を解きながら学べる内容にすることを目的に、ワークブックの構成をとりました。そして、研修会やセミナー、認定看護師教育にも活用していただきました。

ただ、実際には、現場であまり創傷ケアを経験したことがない看護師も多く存在しています。そのような中、「現場で、すぐにでも対応しなければならない状況に直面している看護師たちが活用できるワークブックの誕生を待ち望んでいる」というお声を多くの方からいただいたのです。

そこで、そのご要望にお応えすべく、ワークブック形式を踏襲し、多くのカラー写真と事例を含めた128問の質問・解答で実力をつけていただくことをめざしました。

 

 

「スキン-テア問題編」

自分用にカラーコピーをして記入欄に答えを書くことで何度でも訓練できます

 

 

■創傷に関わるすべてのナースに勧めたい

 

—本書で最も特徴的なところはどこでしょうか?

 

臨床の現場で特に大切なことは“アセスメント”です。それは病院だけでなく、在宅や高齢者施設など「看護師がひとりで判断し、ひとりでケアをしなければならない」環境において重要です。患者の一番近くにいるのは皮膚・排泄ケア認定看護師ではなく、病院でも在宅でも、一般の看護師の方々です。その方々が創傷のアセスメントをしたときに、認定看護師がアセスメントしたものと同様の結果が得られるようなスキルを身につけていただけるように工夫したところですね。

 

—それでは読んでいただきたい読者は、ジェネラリストナースということですか?

 

一般の看護師の皆さんはもちろんですが、私が特に読んでいただきたいのは、皮膚・排泄ケア認定看護師をめざす方や、「特定行為研修」のうち褥瘡や創傷の領域をめざす方ですね。でも、そういう方たちを含めて、やっぱり創傷にかかわるすべてのナースにとって本書は必読かな!(笑)

それから、高齢者が増えている中、これから大切なのは“予防”だと思います。本書はスキン-テアも十分な分量で解説していますから、予防の視点を身につけたい方にもおすすめです。

 

 

「褥瘡解答編」

全ページの1/3にもなる詳細な解答編で創傷の知識をしっかり学べます

 

 

—最後に本書の読者へメッセージをどうぞ。

 

そうですね。「2020年はCOVID-19に始まり、COVID-19に終わる」と言っても過言ではないでしょう。この未曽有の事態に、医療職の方々の日々のご苦労は計り知れないものと推察いたします。

ただ、対応に追われ、時間のない中でも、本書はまず写真から学ぶことができるので、職場や自宅で、ちょっとした空き時間に学習できます。本書を活用して、患者さんのためのケアを充実していただくことを切に願っております。

 

 

 

新刊情報

 

創傷ケアワークブック

スキン-テア/褥瘡/下肢潰瘍

田中秀子/監修

紺家千津子・清藤友里絵・
渡辺光子・内藤亜由美/執筆

●B5判 236ページ オールカラー

●定価(本体3300円+税)

ISBN 978-4-8180-2277-5

発行 日本看護協会出版会

(TEL:0436-23-3271)

 

主な内容

Part1 スキン-テア

STAR分類システム/リスクアセスメント/予防ケアとケア用品/スキン-テアの管理/事例問題

Part2 褥瘡

褥瘡の概要/リスクアセスメント/DESIGN-R/ドレッシング材の選択/ケア手技/事例問題

Part3 下肢潰瘍

下肢潰瘍の概要/下肢潰瘍の予防,治療・ケア/事例問題