訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全
な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会
計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。
渡邉 尚之
管理者が本当に行うべき業務は何か
訪問看護ステーションの経営者や管理者は多忙です。中には明らかに業務過多となっている人もいます。特に経営者が管理者を兼任している場合は、資金繰りなどの財務管理や法人の事業計画を策定するといった経営管理、訪問看護ステーションの経営全般のマネジメントに加え、管理者としての運営管理を行う必要があり、多忙を極めます。
このようなケースにおいて、経営者や管理者が、本来、担うべきとはいえない業務まで担当していることが多々あります。明らかに業務過多であるにもかかわらず、自分の時間を削って多くの仕事を抱え込み、満身創痍でそれらをこなすという働き方は、若さや情熱があれば多少は可能かもしれません。しかし、持続可能性や経営の安定性という観点からは好ましくないといえるでしょう。
そもそも経営とは限られた資源(時間も含めて)を効率的に配分し、最大限の効果を上げることを目的としています。経営者や管理者はこの観点から、自分が携わっている業務が“経営者として”あるいは“管理者として”本当に必要な業務かどうかを考える必要があります。
そこで本稿では、経営者や管理者にとって必要・重要な業務について解説します。
売上につながる直接業務は重要
一般に、業務は直接業務と間接業務に分けることができます。直接業務とは売上に直接つながる業務です。具体例としては、利用者宅を訪問して提供する訪問看護サービスなどです。ただし、管理者にとっての直接業務とは、もう少し経営の根幹的な要素を含めて解釈すべきです。つまり、自ステーションの経営方針や事業計画、看護師の採用面接・教育指導、訪問シフトの決定など、実際の訪問まで運営管理全体にかかわる業務です。これらには管理者としての「判断力」が重要となります。
管理者の直接業務は多くの場合、この判断力を必要とするものです。「(経営)意思決定業務」という表現を用いることもあります。管理者の決定によって多くの利害関係者(利用者・担当看護職・主治医・ケアマネジャー・ほかの介護事業者など)に影響を与える非常に重要性の高い業務です。
→続きは本誌で(コミュニティケア2020年2月号)