訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全
な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会
計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。
経営者ではない管理者が身につけるべき経営視点
渡邉 尚之
「経営者ではない管理者」という立場
訪問看護ステーションの管理者には経営的視点から大きく2つのタイプがあります。それは経営者と管理者が同一人物である場合と経営者と管理者が別人物である場合です。
看護師が株式会社などを設立して訪問看護ステーション事業を始めたケースでは、経営者(代表取締役)=管理者となることが一般的です。
この場合のメリットは、管理者として把握している事業所の成績が、ステーション経営にどのように影響するかをダイレクトかつタイムリーに把握できる点です。それにより経営改善や新規事業戦略展開の意思決定などがスピーディに行えます。逆にデメリットは、管理者は管理業務のみならずプレイヤーとして訪問看護業務にも携わっていることが多く、その場合は経営者・管理者・訪問看護師という3足のわらじを履くこととなり、非常に多忙となる点です。特に、訪問看護業務が忙しくなると管理業務や経営意思決定業務に手が回らず、事業が停滞するというリスクがあります。
一方、経営者と管理者が別人物のケースとしては、医療法人などによる運営(経営者は理事長)や異業種からの参入(経営者は非医療職)などが考えられます。そうした場合、経営者は訪問看護ステーションの管理者要件を充足しないため、経営者以外の看護師が管理者を務めます。この管理者は経営者(最終的に経営意思決定を行う者)ではなく、運営管理を中心に業務を行うことが多いです。しかし、意思決定権者でなければ管理者に経営管理は不要というわけではありません。なぜなら利用者ごとの単価・訪問回数、さらにはスタッフのモチベーションなどを含む訪問看護ステーションの経営管理に必要な情報や状況を最もよく理解しているのは管理者に他ならないからです。
→続きは本誌で(コミュニティケア2019年12月号)