「シリーズ【看護の知】」は、臨床経験を経て大学院で学んだ看護職の研究成果(博士論文)を、幅広い読者に役立てていただくための書籍シリーズです。看護師が現場で抱く「言葉にできない何か=暗黙知」を可視化し、自らの看護を切り拓いていく上で必要な発想やアプローチを解説・紹介します。
著者:蛭田明子
●A5/176ページ
●定価(本体2,400円+税)
2017年発行
ISBN 978-4-8180-2056-6
死産や新生児死亡を経験した女性に対して、医療者は積極的にその体験について聞くことをためらいがちです。しかし女性の本当の想いを知らずして、必要な支援を提供することはできません。センシティブゆえにこれまで表立って取り上げられてこなかったテーマですが、著者は4人の女性にインタビューを行い、彼女らの想いや体験について現象学的な解釈を試みました。喪失を体験した女性にかかわる医療者に求められる有用な支援は何かについて考察した、意欲的な一冊です。
患者さんの身体を拭いているときに「あー気持ちいい」と言われ、うれしく思ったことがある人は多いのではないでしょうか。しかし「気持ちいい」体験は明確に説明することができないものであり、それゆえ看護師は「気持ちいい」を漠然と捉え、患者の視点で探求してきませんでした。本書は、患者の「気持ちいい」体験を本人の視点で捉え直すことで、病いを生きている人にとって「気持ちいい」とはどのような意味を持つものなのかについて解釈を試みたものです。
中枢神経や末梢神経の障害などによって引き起こされる「しびれ」の症状は、他者からの理解が得にくいことから患者の孤独と苦悩が大きく、ケアする者も対応に難渋します。病棟勤務で患者の自死に遭遇した著者は、しびれを持つ患者の言動や振る舞いを詳細に記述し、それらを看護師と共有された経験として丹念に意味づけを行いました。「病んだ身体」を持つ当事者とその家族、医療者がそれぞれに抱える困難性を克服しようとする筆者の真摯な試みです。