SPECIAL BOOK GUIDE 「冷えがなぜよくないか」、納得の上でケア実践!〈ウィメンズヘルスケア・サポートブック〉『根拠に基づく 冷え症ケア』刊行!

〈ウィメンズヘルスケア・サポートブック〉では、
女性の生涯にわたる健康の維持・促進を見据えたケアを提案します。
本書はその第1弾です。

 

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「冷やすのはよくない」と、私たちは感覚的に認識しています。しかし、「では、なぜよくないのか」、理解しているかというと……? どうでしょうか。
本書では、「冷え」と妊産婦の健康との関連性について豊富な研究実績を持つ著者が、その成果=科学的根拠を基に、「冷え」の基礎知識からケアの重要性、具体的なケア方法をわかりやすく解説します。

 

■「冷え」に対する認識・意識
「冷え」に悩む人は多く、日本人女性ではその7割が冷え症であるといわれています。――ここで、「何をもって『冷え症である』とするのか」「『冷え症』? 『冷え性』ではなく?」と、疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。前者(「冷え症」の概念)については、本書で詳しく解説されており、後者については、後ほど述べますので、それらをご参照いただくとして――「冷やす」あるいは「冷える」ことに関して、私たちは、単に不快であるからというだけではなく、なんとなく「よくない」ことであるという認識を持っています。

 

また特に女性には、幼少期、思春期、成熟期……と、さまざまな時期や場面において、「冷やしちゃダメ」と教わったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 

さらに、「冷え取り」「温活」……こうした言葉とともに、各種メディアで取り上げられているのを頻繁に目にすることからも、人々の「冷え」に対する関心の高さや、「冷え」が取り除くべきもの=よくないものであると認識されているということを、うかがい知ることができます。

 

それにもかかわらず、「では、なぜ『冷え』はよくないのか」と問われると……? その点については、ほとんど意識していなかったことに気づきます。

 

■「冷え」とお産の関係を探る―先行研究がない?!
本書の著者、横浜市立大学教授・中村幸代氏が、「冷え」に注目し、研究テーマとして取り組むきっかけとなったのは、助産所での研修でした。

 

「冷え」が異常分娩の誘因であることを妊婦さんに説明し、念入りにケアやアドバイスをする助産師の姿に、「冷えていると、本当に異常分娩が起こりやすいのか」など、多くの疑問を抱き、調べてみることに。

 

しかし、「冷え」に関する研究論文、特に、お産との関係についてのものは皆無。さらに、西洋諸国(西洋医学)には「冷え」の概念すらないらしいことがわかってきました。

 

「現場ではあれほど問題視されていたのに!」と衝撃を受け、以来、自らがその研究に取り組み、また、その成果がケア実践の現場で生かされるよう、さまざまな形での情報発信にも力を注ぎ続けています。

 

本書は、「冷え」のもたらす健康影響や、ケアの重要性について、特に、実際に女性のケアに当たっている方々や、ケアの必要な女性たちに届けたいとの思いから誕生しました。これらについて理解することで、ケアに対する意識や姿勢も、ケアの質も高まると期待できるからです(実際、これについても著者の研究により示唆されました。本書で紹介しています)。
・そもそも、「冷え」「冷え症」とは何か(概念分析)。
・「冷え」がもたらす健康影響とは。
・冷え症を解消することはできるのか。
・そのためには、どのようなケアをすればよいのか。
といったことが、豊富な研究実績=科学的根拠(エビデンス)に基づき、イラストや図表も多用しながら、わかりやすく解説されています。

 

■冷え「症」―重要視するべき症状
「ひえしょう」の漢字表記には、「冷え性」と「冷え症」の2種類があります。一般的には、「冷え性」という表記が使われていることが多いようですが、本書では、「冷え症」と表記しています。冒頭でも触れましたが、気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

これは、「性」=単なる状態や性質にとどまらず、「症」=病気につながる症状として重要視するべきものである、という著者の信念に基づきます。

 

実際、著者の研究により、冷え症は、妊産婦の健康にさまざまな影響を及ぼすことが明らかになりました。

 

冷え症が異常分娩(早産、前期破水、微弱陣痛、遷延分娩、弛緩出血)や妊娠期のマイナートラブル(肩こり、腰痛、倦怠感など)の発生と深く関係しているということ、冷え症はセルフケアにより改善できるということ、そして、そうすることでマイナートラブルが解消できるといったことが、データによって示されます(▲基礎編:「冷え」を科学する)。

 

なお、解説には、統計分野の用語も登場しますが、それがどのような調査に使われるのか、その数値が大きいと/小さいとどのような意味かなど、傍注で補足していますので、統計になじみがなくても、スムーズに読み進めることができます。

 

■根拠に基づく具体的ケア方法
――納得の上でケア実践

 

冷え症がもたらす健康影響、そしてそのケアの重要性について納得したところで、いよいよ、「では、どうすれば冷え症を改善することができるのか」が、具体的に示されます(▲応用編:「冷え」をケアする)。

 

著者らが開発し、研究によりその効果も実証済みのセルフケアプログラム「冷え症改善パック」をはじめ、手軽に始められ、そして、これが重要なところなのですが、継続できる方法が示されます(写真)。
このように、「助産師の実践知」と「科学の知」を統合した、〈実践的理論書〉とも称すべき1冊となりました。根拠に基づくケア提供に(もちろん、セルフケアにも)ぜひ、ご活用ください。

 

 


〈ウィメンズヘルスケア・サポートブック〉
根拠に基づく 冷え症ケア

 


 

中村幸代 著
●B5判・96ページ
●定価(本体1,800円+税)
ISBN978-4-8180-2173-0
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)

 

 


→看護2019年6月号より

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