トシコとヒロミの往復書簡 第15回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

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井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

訪問看護制度の創設

文:井部俊子

 

川越さんの手紙に、訪問看護の開拓者たちの「組織のバックもないまま現場から制度に物申してきた働き」や、「制度ができたときは、天からのプレゼントのようにうれしく感じた」ことが記されていました。訪問看護制度の創設に貢献したあなたも含めた現場の力とコミットメントに感動いたしました。

 

訪問看護制度は、看護政策の政策過程の研究として、准看護師制度の事例との比較として、研究され出版されています(野村陽子, 看護制度と政策, 法政大学出版局, 2015)。私はこの本を認定看護管理者教育課程サードレベルの講義に教材として使っています。野村論文では、看護政策の政策過程からみると、准看護師制度は政策決定に至らなかった失敗事例、訪問看護制度は制度の創設に至った成功事例として評価されています。

野村論文では訪問看護制度創設の政策過程を次のように分析しています。訪問看護を政策課題として設定するために影響を及ぼしたのが厚生省の国民医療総合対策本部であったということです。「この組織は事務次官を本部長とし、本格的な高齢社会を目前に控え、これからの医療を根本的に見直さなければならないとの考えから全省を挙げて設置」され、国民医療総合対策本部中間報告(1987年6月26日)をまとめています。この報告書では、「老人や家族のニーズに応じた在宅療養を推進するためには、訪問看護等の医療サービスとあわせて在宅介護等の福祉サービスが必要不可欠である」と述べ、「総合的な地域ケア推進のためのモデル事業を実施する」としています。

 

厚生省の動きについて関係団体はどのような認識を持ちどのような対応をとったのか、野村論文をみてみましょう。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2016年12月号)