〈新連載〉
誤嚥性肺炎や窒息のリスクが気になる食事ケア。
でも、嚥下障害と姿勢アセスメントの基本的な知識と技術があれば、利用者が安全に食べることを継続して支援できます。
筆者らが提唱するPOTT プログラムの基本スキルを基に、現場で遭遇する問題の原因やケアの方法・根拠を紹介します。
執筆
迫田 綾子 さこだ あやこ
日本赤十字看護大学名誉教授
POTT プロジェクト代表
知りたいこと その❶
POTT スキルとは? 食事時のポジショニングの効果は?
連載のはじめに
本連載では、POTTプログラムを基盤とした「食事ケアとポジショニング」の知識と技術を通して、“だれでも、どこでも、すぐに役立つ食事ケア”を、実践者によるリレー形式でお伝えしていきます。
POTT(ぽっと)とは、「ポジショニングで食べる喜びを伝えるプログラム」の愛称で、プログラムは食事支援に際して患者や療養者に実施するポジショニング技術とその教育方法で構成されています1)。筆者が摂食嚥下障害看護認定看護師らと開発した新たな食事ケアの臨床知を広く共有し、一人でも多くの看護師が対象者の希望を引き出し、生活の中で食べるよろこびをともに支え合うことを目的としています。
連載の前半では、総論として食事ケアとポジショニングの概要を解説し、後半の各論では訪問看護師が利用者の食事支援を行う際に直面するさまざまな困りごとを読者とともに考え、解決していきたいと思っています。
食事ケアとポジショニング
「食べるときが一番幸せ!」という読者はたくさんいるでしょう。テレビでも、食に関連する番組が連日連夜放映されています。食べたいものを自分で選び、自分自身の力でおいしく食べることは、人々のささやかなよろこびであり、最も基本的な願いです。
しかし近年、高齢化と疾病構造の変化により摂食嚥下障害のある人が増加し、そうしたよろこびや願いが脅かされるような状況が多々見られます。経口摂取困難や低栄養、誤嚥・窒息など、命に直結する事態にも直面する中で、訪問看護師たちは、療養者の願いをかなえるために日々奮闘しています。しかし、業務に追われる中で、療養者からの切羽詰まったサインを見逃してしまうこともあるのではないでしょうか。
筆者らは、この現状を看護の力で解決したいと考え、看護技術教育では教えられていなかった“食事時のポジショニング”に着目し実践研究を開始しました。食事ケアの基本技術には、ポジショニング・口腔ケア・呼吸ケア・食事介助などがあります。中でもポジショニングは教育や技術の体系化が一番遅れていることから、習慣的な食事介助を見直し、ケアリングと行動を軸として根拠のある技術開発をめざすことにしたのです。
→続きは本誌で(コミュニティケア2025年4月号)