病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。
川下 貴士 ●かわしも たかし
松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教
第8回 自分なりの道を行く
前回のあらすじ
自分のアセスメント力不足を感じ、今後、身体科を経験したほうがよいかと悩むこころさんはカピバラ先生にアドバイスを求めました。しかし、まだ悩みは解決できていないようで……。
カワウソ あれ、こころさん。カピバラ先生のところに相談に行った割にはまだお悩みは解決していない様子ですね?
こころ はい。実は私、訪問に行っていたのにAさんの糖尿病の症状には気づけなかったことを後悔していて……それは身体科の経験がないからだと思いました。それで一度、身体科を経験したほうがいいのか、身体科と精神科①、どちらも経験しているカピバラ先生に相談しに行ったのですが……。
POINT①
精神看護の領域では内科や外科等のことを身体科と言います
Aさん/40歳代男性/統合失調症/幻聴・妄想あり
学童期のいじめをきっかけに不登校となり、そのまま数十年間引きこもっている。両親が亡くなるまで同居していたが、5年前から賃貸アパートにて一人暮らし。精神科への通院と訪問看護の利用により在宅生活を続けていたが、ある日、服薬が継続できずに入院。その後、精神症状は安定したが、糖尿病であることが判明した。退院後はなんとか服薬が継続できている。
カワウソ なるほど。カピバラ先生は何と言ってましたか?
こころ うーん……助言はたくさんもらったんですけど、「“私がどうなりたいか”を大切にしてほしい」と。あ、あと、新卒からずっと精神科一筋のカワウソ先生の話も聞いてみて、と言われたので、カワウソ先生のところに来ました!
興味があるってとっても大事
カワウソ ふむふむ。ところで、こころさんは現在、精神科看護と身体科看護②どちらに興味がありますか?
POINT②
本稿ではわかりやすいように、このような表現を使用しています
こころ え、いきなり? 難しいですね、どっちだろう……。
カワウソ おそらくどちらにも興味があるでしょうから、簡単には答えられませんよね。でも、それでいいんです。たくさん悩んで、最終的にはこころさん自身が決める。これが大切なんです。
こころ あ、カピバラ先生も同じようなことを言ってました!
カワウソ 自分で考えて自分で決める、これはキャリアに限らず、精神科看護においてもとても重要なことなんですよ。自己決定という言葉は、こころさんが学生のときの授業でも説明したと思います。
→続きは本誌で(コミュニティケア2025年4月号)