「家族看護 18」の特集「退院支援における家族ケア」について、編集委員を代表して、牛田貴子先生(信州大学医学部保健学科准教授)から寄せていただいた文章(p.8に掲載)をご紹介します。
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なぜ退院に向けて家族ケアを行うのでしょうか。簡単に言えば、「入院(入所)—退院(退所)により、本人も含めた家族全員がその影響を受け、家族全体の健康と生活に関して課題が生じ、新たな対応が必要となる」からです。
「家族」という言葉は、大変便利な言葉です。状況によって、文脈によって、微妙に自由に使い分けられます。主介護者のことか、本人以外の家族全員か、本人も含んだ家族の総員か、同居や血縁ではない家族も含んでいるのか。「家族看護」を考えるにあたって、「家族」の定義を外すことはできません。そこで本特集のそれぞれの論文に描かれている「家族」の捉え方と、その背景を味わいつつ、読み進めていただければと思っています。
看護師は病棟においても、外来においても、在宅においても、施設においても、さまざまな立場で「退院支援」に関わります。また、他(多)職種連携、看—看連携の実践の中で、自らの看護の専門性とその技量を問われます。大変身近な援助技術であり、かつ、高度な援助技術であるといえるでしょう。
理論編では、「退院支援において家族をどう捉えるか」についてさまざまな切り口で論を展開していただきました。方法論では、「退院支援をどのように進めるのか」について、単なるハウツーにならないように背景理論を押さえつつ論じていただきました。さらに誌上コンサルテーションでは対応困難ケース5事例をご提供願い、それぞれにコメントをいただいたことで、より退院支援の技術を身近に感じ、読者が知を活用できるようになっています。
依頼した原稿をいただく直前に、東日本大震災が発生しました。メディアから流れる情報に圧倒され、「家族」の絆があるからこその悲惨さ、「家族看護」を説くことそのものの無力さなど、言葉に表現できないモヤモヤとした感じから、なかなか抜け出すことができませんでした。これからさまざまな方面からの検証がなされていくと思います。「家族看護」においても、新たな局面を迎えるのではないかと感じています。
編集委員を代表して・牛田貴子