訪問看護ステーションにおけるBCP(事業継続計画)の
策定、防災・減災対策のポイントを解説するとともに、
実際の事例などをとおして災害時の
対応・危機管理のあり方を示します。
地域における
BCP連携の必要性①
山岸 暁美
やまぎし あけみ
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 講師
一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 機構長・理事長
今号と次号にわたって、災害対応マニュアルとBCPの違いを解説した上で、地域におけるBCP連携の必要性について述べていただきます。
はじめに
令和3年度介護報酬改定により義務づけられた業務継続計画(Business Continuity Plan: BCP)策定の猶予期間3年のうち、1年が経ちました。少し焦り始めている読者もいるかもしれません。しかし、BCPは最初から完璧にはできません。また、つくって終わりにしてもいけません。つくったBCPをシミュレーション訓練で評価し、改良を重ねて育てていくこと、このプロセスこそが最も大事なのです。
また、自事業所のBCPはもちろん必要ですが、地域を面として捉え、近隣の訪問看護事業所等との連携により、医療・ケアを継続するという視点も非常に重要です。今回、BCPとは何かという説明に加え、このことについて詳しく解説します。
BCPは災害対応マニュアルと
何が違うのか?
災害対応マニュアルは、リスクごとに作成
私たちはたくさんのリスクを抱えながら生活しています。リスクは自然災害のみならず、感染症や事故、人災もあります。
災害対応マニュアルは、これらの各リスクに対して、「それが起こったとき」に「直ちにどう対応するか?」が記載されています。つまり、緊急事態が生じた原因となる事象への緊急・初動対応を行動レベルで示したものが、災害対応マニュアルというわけです。
地震と感染症では初期対応がまったく異なります。例えば、地震であれば、利用者の安否確認や避難支援、人工呼吸器などの生命維持装置への対応、被災状況の確認などが挙げられます。一方、感染症であれば、スタンダード・プリコーションの徹底や事務所の感染対策、利用者・家族等への感染予防策の周知などが挙げられるでしょう。こうしたことが、各種災害対応マニュアルに記載されます。