一般病院・急性期病院において高齢の入院患者が増える中、臨床現場では認知症対応のスキルアップが求められています。本書は忙しい医療者にとって負担が少なく効果的に学べる「認知症ケアの教育プログラム」を紹介し、このプログラムを基に急性期医療での認知症ケアについてわかりやすく解説しています。付録「医療者のための認知症対応シート」と合わせて今すぐ活用できる知識が満載です。
■多忙な現場で求められる“認知症対応スキル”
高齢化に伴い、臨床現場では診療や入院に占める高齢者の割合が高くなっています。急性期病院でも、認知症を併発しつつ身体疾患の治療・ケアを行う患者が多くなっているといわれます。短い入院期間中にも身体機能や精神機能を落とすことなく地域に戻れるようにするために、医療者の認知症対応スキルの向上が求められています。
こうした現状から、急性期医療における認知症ケアが推進され、認知症ケアチームの活動が始まりました。急性期病院の医療者に対する認知症ケアの教育・研修も積極的に行われ、認知症ケア加算では研修の修了や実施が要件として盛り込まれています。しかしその一方で、認知症ケアチームのメンバーや研修の担当者からは「忙しい臨床現場でどうすれば効果的なケアを進められるのか」「研修をしたいが教材や資料づくりが大変」などの声も聞かれます。多忙な医療者が短時間で効果的に認知症ケアを学ぶことが課題であるといえます。
■認知症ケア加算などの研修に活用を
本書では、急性期病院で効率的・効果的に認知症ケアを学ぶために、編者・小川朝生氏(国立がん研究センター先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野 分野長)らリエゾン精神医学・看護/老年看護のエキスパートが国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)等の援助を受けて作成した「認知症ケアの教育プログラム」を紹介しています。このプログラムを踏まえ、急性期病院において、認知症の人が入院しても身体機能・精神機能を維持するためのケアについて要点を絞って解説。また、グループワークやロールプレイの進め方や、「認知症ケアの知識テスト」など研修の教材・資料も多数掲載しています。
■切り取ってすぐ使える「医療者のための認知症対応シート」付き
巻頭付録として「せん妄? 認知症?と思ったら医療者のための認知症対応シート」を掲載しています。このシートでは右ページの「本書のポイント」にあるStep0〜3ごとにアセスメントやケアのポイントを簡潔に示しており、両面8ページ構成で切り取って使えるポケットサイズです。このシートをポケットに入れておけば、認知症の症状がある人をケアするときに、対応のポイントをその場ですぐに確認できるでしょう。
また、認知症ケア研修でのシートの活用方法についても詳しく解説しています。
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多忙な医療現場で認知症ケアに取り組む皆さま、また、より効果的な認知症ケアの教育・研修を模索されている皆さまに、本書をぜひ役立てていただければと思います。
認知症plus院内対応と研修
ケアのポイントを短時間で効果的に学ぶプログラム
小川朝生編
小川朝生・田中久美・
井上真一郎・東谷敬介・
榎戸正則・谷向仁・
上村恵一・木野美和子著
●B5判・156ページ
●定価3,520円
(本体3,200円+税)
ISBN 978-4-8180-2343-7
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)
目次
巻頭
せん妄? 認知症?と思ったら 医療者のための認知症対応シート
Introduction
「認知症ケアに関する教育プログラム」の概要
Part 1
《講義》急性期医療における認知症ケア
Part 2
一般病院における『医療者のための認知症対応シート』の活用
Part 3
《事例検討》認知機能障害への気づきと対応
Part 4
《ケアの実践》認知機能障害に合わせた治療上の支援、
コミュニケーション
Part 5
《ケアの実践》認知機能障害を意識した退院支援
Part 6
《解説》身体拘束の最小化を目指した認知症ケア
Part 7 認知症ケアの研修に活用できる教材・資料