訪問看護ステーションや高齢者ケア施設で
生じやすい人事労務に関するトラブルと対応策、
またトラブルの防止策について解説いただきます。
採用で失敗しないコツ①
面接でマインド(考え方)を見抜く
中山 伸雄
なかやま のぶお
社会保険労務士法人Nice-One 代表 / 社会保険労務士
コロナ禍において世の中の雇用情勢は一変したとはいえ、医療・介護業界では、人手不足が続いており、すでに「採用できない」ことが一番の悩み事になっている事業所も少なくないでしょう。社会保険労務士として事業所を回る中で、経営者・採用担当者から「採用が難しく、人材紹介会社からの採用が中心になっている」という声を聞きます。一方で、高い紹介料に苦しんでいる事業所、また紹介料を支払って採用したにもかかわらず期待外れの人材だったり、早期に退職となったり、悩みのつきない事業所も多いようです。さらにこの採用難が「採用の失敗」を生み出す、負のサイクルも見過ごせません。採用の失敗とは、期待能力を大幅に下回る人材や社会人として問題のある人材を採用してしまう、いわゆる採用のミスマッチのことです。
しかし、面接だけで入社後のパフォーマンスを判断するのは不可能です。一方、事業所は応募者に「採用内定」を出した時点で、大きな責任を負うこととなります。その後、簡単には採用を撤回することはできず、また入職後に辞めてもらいたいと思っても基本的には相当の理由がない限り、法律で禁止されています。採用したものの「能力があまりにも期待外れだった」「人間性に大きな問題があった」ということになれば、事業所も従業員も大変な思いをすることになります。そのため事業所は自社の利益と現在の従業員を守るために、応募者が求める人材であるかを見極めることが重要です。
面接で応募者を見極めるポイントは、①マインド(考え方)、②スキル(能力)の2点です。本稿では①を、次号では②について紹介します。
心構え:「スキーマ」に影響されない
「スキーマ」とは、人に対する絶対的な思い込みのことです。皆さんは採用判断のときに、表1のような思い込みをした経験はないでしょうか?
人は、その人の肩書きや経歴で思い込みをする傾向があります。多くの面接官が、面接開始早々に応募者に対して「思い込み」をして、その思いや期待を抱き続け、面接を終了してしまうようです。