地域ケアの今(63)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

 

「認知症」になることに備えて

文:鳥海房枝

 

厚生労働省は2018年11月に自らの人生の最終段階を周辺の人々とあらかじめ話し合っておく重要性を普及・啓発する目的で、アドバンス・ケア・プランニング(以下:ACP)の愛称を「人生会議」としました。その1年後の同月にこの言葉と考え方を広めるために、結果的には評判の悪かったポスターも作成しました。

 

このころには、介護保険での看取り介護加算の算定もあり、特別養護老人ホームなどの高齢者ケア施設では施設内看取りが珍しくなくなりました。さらに現在では終末期ケアに、ACPの考え方は必要不可欠になっています。すなわち「逝く本人の意思に沿った看取り」です。日本は今後、超高齢化社会から多死社会に突入します。ここで社会的に見た「多死社会」は傍らに置き、自らの生き方(逝き方)を周辺の人々と話し合い、意思表明しておく重要性が言われる

ようなった理由を考えてみます。

 

急激な人口減少を生み出す

死に逝く人の増加と出生率の低下

 

3世代世帯は当たり前、4世代世帯も珍しくなく、人の死が暮らしの中の「家」にあった1950年代には、ACPといった考え方は不要でした。その後、逝く場所が家から医療の場に変わっていったのは、国民皆保険制度の誕生により医療へのアクセスが容易になったことが関係していると思います。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2020年12月号)