空気を屋外と同じように清浄に保っていますか
患者が呼吸する空気を屋外の空気と同じように清浄に保つこと。しかし、これほどなおざりにされていることが他にあるだろうか。患者の部屋の空気を入れ換えるときでさえ、その空気がどこから入ってくるかを考える人はほとんどいない。それは他の病室と空気が通い合っている廊下から来るかもしれないし、風が通ることのないホールの、ガスや料理の臭いやあらゆる種類のかびくささが立ちこめているところから来るかもしれない。──それはむしろ空気を毒していると言うべきである。(p.7)
感染の流行は自分たちの身を置いている状態に対しての、親切な自然の反応として考えるべきです
私たちは、ふつうの言葉で「感染」と呼ばれているところのものを忘れてはならない。──病気を猫や犬のように存在しているに違いない別々の実体であるとする今の私たちの考え方では、間違いを続けながら生きることにならないか。本当は、病気は状態として、例えば汚れた状態とか清潔な状態というように、私たち自身の管理の十分に及ぶところのものとして考えるべきではないか。あるいはむしろ、病気とは、私たちが自分たちの身を置いている状態に対しての、親切な自然の反応として考えるべきではないか。(p.31)
感染に対する最善の防止策は何か、理解していますか
真の看護は、感染はそれを予防すること以外は顧みない。真の看護師が必要としている唯一の防御策は、清潔さ、開け放たれた窓からの新鮮な空気、そして患者への絶え間ない気遣いである。賢明で思いやりのある患者管理こそが、感染に対する最善の防止策である。(p.33)
責任をもつとはどういうことなのか、理解していますか
最も大きな惨事から最も小さな事故にいたるまで、その結果をもたらした原因を追跡していくと、「責任をもつ」人がいなかった、あるいはそういう人がいても「責任をもつ」にはどうするのかを何も知らなかったということにたどりつく(あるいは、たどりつけなかった)場合が多い。(p.43)「責任をもつ」とは、あなた自身が適切な処置をとるだけではなく、他の誰もがそうするよう見届けること、そして誰も故意にせよ知らずにせよ、このような処置を妨害したり阻止することがないように見届けることである。それはあらゆることをあなた自身がすることでもなければ、たくさんの人々をそれぞれの任務に割り当てるということでもない。一人一人が自分に割り当てられた任務を行うのを確実にすることである。(p.44)
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耳が痛い言葉の数々──150年前の提言が、21世紀の今でもそのまま通用することに驚かされます。目に見えないウイルスの脅威に曝されている今だからこそ、改めてナイチンゲールからのメッセージを一つひとつ読み解き、直面している現実に生かしていくべきではないでしょうか。
(弊社刊『看護覚え書き』掲載ページより一部抜粋)
ナイチンゲール生誕200年記念出版
1820年5月12日、イタリアのフィレンツェで生まれたフローレンス・ナイチンゲールは、今年200歳の誕生日を迎えます。弊社ではこれを祝福し、2020年1年間にわたって、
ナイチンゲール自身の著作および彼女にまつわる関連書籍のシリーズを刊行いたします。
「クリミアの天使」という一般的なイメージを越境したナイチンゲールの多面性・多様性と人間的魅力を、
本シリーズを通して感じていただければ幸いです。
フロレンス・ナイティンゲール 著
小玉香津子・尾田葉子 訳
●A5判・180頁
●定価 本体1500円+税
ISBN 978-4-8180-2214-0
ナイチンゲールの代表的著作であり、その完全性を著者自身が明言した“Notes on Nursing”初版本(1859年)の全訳
ミュリエル・スキート 著
小玉香津子 訳
●A5判・160頁
●定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-8180-2257-7
世界保健機関(WHO)のコンサルタントが、ナイチンゲールと同じタイトル・章立てで書いた、1980年版『看護覚え書き』
福田邦三 校閲・訳
永坂三夫・久永小千世 訳
●新書判・312頁
●定価 本体2700円+税
ISBN 978-4-8180-2259-1
ナイチンゲールはなぜセント・トーマス病院を選んだのか? 看護教育制度の確立という自らの夢をかけた彼女の覚悟に迫る!