地域ケアの今(51)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

自らの“老い”と折り合いをつける

文:鳥海房枝

 

第三者評価の利用者調査で高齢者ケア施設などを訪れた際には、事故・ヒヤリハット報告書の現物を見せてもらっています。介護保険サービスを提供する現場で事故が発生した場合は、保険者である市区町村に届け出ることが義務づけられています。ただし、報告する事故の範囲(内容)は保険者が定めており、保険者によって異っているのが実情です。中でも際立っている違いは、骨折をはじめとする外傷等(窒息等による死亡事故を含む)で入院や継続的な通院治療を要するなど、利用者の身体に影響があった場合に限定しているところや、無断外出・異食・誤薬等にまで報告を求める保険者まであることです。

 

特に後者については、どの範囲までを事故と指すのかについては微妙な部分があると考えます。例えば、異食という食べ物以外のものを口に入れてしまう行為の捉え方です。確かに生命にかかわるようなものを口にしないように環境を整えることは必要です。実際に、利用者の異食行為を防ぐためにリビングに何も置かず、結果として殺風景な空間となっている特別養護老人ホームもあります。ただし、異食行為をする理由を考えずに、それを「事故」と捉えて防止することに目を奪われると、最終的には身体拘束という手段をとらざるを得なくなります。むしろ、安全に異食できる環境を整え、利用者の行動理解につなげたいものです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2019年12月号)