本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。
川越博美さんから井部俊子さんへの手紙
人の変化を見守る
文:川越博美
私たちが往復書簡を始めて2年近くになるのですね。私が現場で腑に落ちないことをぶつけては井部さんに諭されてきたような気がします。ナマの川越をいつかまじまじと見てくださいね。頭は白髪で顔には皺……でも若い看護師たちと一緒に働き、地域の人々と新しいことにチャレンジしています。私もナマの井部さんにお目にかかりたいと思っていたら、井部さんの最終講義があることを知りました。「しめた」と思い手帳を開けたら、ほかの予定が入っていてチャンスを逃しました。聴講した友人が、マネジメントについての講演だったと教えてくれました。
マネジメントは、病院の看護職だけでなく訪問看護師にも必要な能力です。しかし、ケアマネジャーが登場して以来、訪問看護師にマネジメント能力が問われなくなってきた気がします。訪問看護師には本来、ケアマネジメントに加え、事業所のマネジメント、チームのマネジメント、地域のマネジメントなど重要な役割が課されているというのに。いつか井部さんに、地域の看護師を対象にマネジメントについて話してほしいと願っています。
前回のお手紙で、「退院後訪問指導料」の創設が、病院看護師の守備範囲の拡大につながるだろうと解説してくださいました。「退院時共同指導料」では、入院中の医療機関の医師・看護師と訪問看護師、ケアマネジャーなどの共同指導にも加算が設けられ、退院前の在宅における多職種のかかわりが促進されました。
これらの診療報酬の設定は、病院と在宅の看護職が同じ土俵で同じ対象者にケアを提供する環境を整えてくれました。“相互乗り入れ”の看護がどのように評価されていくのか楽しみです。
半面、退院後に病院の看護職が訪問して在宅療養に訪問看護が必要かどうかを判断し、医療処置方法を指導することには疑問を感じます。理由の1つは、わざわざ退院後に病院看護職が訪問しなくても、退院前に在宅の専門職と一緒にその必要性や方法を考えれば済むことだからです。
→続きは本誌で(コミュニティケア2017年5月号)