「病院は忙しすぎて、退院する患者の“生活”が見えにくいのでは?」と感じているナースは多いと思います。では、患者・利用者の「生活」とは、どのようなもので、どう支えていけばよいのでしょうか? そして、なぜ病院では“見えにくい”のでしょうか?
訪問看護ステーションや特別養護老人ホームなど“地域”のナースのための専門誌「コミュニティケア」の2016年11月臨時増刊号では、今まで漠然と使われてきた患者・利用者の「生活」について、訪問看護師や高齢者ケア施設などのナースが密につながっている「生活を支える看護師の会」のナースたちの実践報告を基に考えていきます。
■「生活を支える看護師の会」の立ち上げ
本書の編者である「生活を支える看護師の会」は2014年9月に設立されました。同年7月に行われたある研修会で、当時、在宅医療・訪問看護・病院・介護老人保健施設・有料老人ホーム・特別養護老人ホームで働いていたナースたちが出会い、後に会長となる小林悦子さんが声かけをして話し合うようになりました。
看護の歴史をたどり、制度を学びながら、まずはお互いの業務内容や役割を学びました。名称は聞いたことのあるお互いの仕事ですが、その内容や思いは知らないことばかりでした。
そして「これまで看護師が“生活を支えること”を語り合うことはなかったよね……」と、「患者・利用者の“生活を支えること”とは何か、そこにおける看護というものを共に考え、行動し、誇りと覚悟を支え合い、学び合おう」をテーマに話し合う「生活を支える看護師の会」が立ち上がったのです。
■「生活の場」から生まれる“思い”はさまざま
「生活を支える看護師の会」は月に1回の定例会のほか、一般の参加も可能なセミナーの開催や、多職種連携の勉強会を行うと同時に、フェイスブック(FB)に公開グループとしてページを立ち上げました。FB上の“会員”は2016年12月現在、500人近くになっています。
定例会やFB上で、生活の場での看護の悩みや、病院との連携などの悩みが語られ、在宅と施設でも異なる“思い”があることがわかってきました。そして、病院も含めたすべてのナースが「生活」についての理解を共有する一助になれば、と本書での発信となりました。
■病院・地域のナース連携に役立ててほしい
本書は、普段なかなか患者の生活の場である自宅などを訪問する機会のない病院のナースが「患者の自宅や施設での様子」を知ることに役立つ内容がいっぱい詰まっています。
本書を活用して病院と地域のナースが「患者・家族の望む退院支援や在宅療養支援」などを話し合う機会を持っていただければと思います。