平成25年版
看護白書
日本看護協会では、2006年より
「働き続けられる職場づくり」を実現するために、労働環境の改善に向けたさまざまな事業を展開してきました。そこで『平成25年版 看護白書』では、これまでの各事業の解説と成果、医療施設における事例などをまとめました。本書に込められた日本看護協会の“思い”について、常任理事の松月みどり氏にうかがいました。
――今回の白書では、看護労働をテーマにさまざまな取り組みや成果を中心にまとめられていますが、どのような内容でしょうか?
これまで日本看護協会(以下:本会)が労働問題に関して行ってきた取り組み、「看護職のWLB推進ワークショップ事業」「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」「労働と看護の質向上のためのデータベース事業(以下:DiNQL)」などに関する成果や看護の現場での取り組みにより、“労働環境を変えることができるんだ”という実績が国にも認められました。
その結果、「看護師等の『雇用の質』の向上に関する省内プロジェクトチーム」「医療分野の『雇用の質』向上プロジェクトチーム」という取り組みが厚生労働省から打ち出されたのです。
本書は、これら一連の経緯をまとめた、看護労働における歴史に残る書だと思っています。
また、本書は緻密に構成を考えてあります。始まったばかりのDiNQLを除き、各事業やプロジェクトの解説の後に、好事例を紹介しています。つまり、各事業やプロジェクトに関してどんな取り組みをして、どんな支援を受ければ現場の労働環境は変わるのかということが、具体的にわかる内容なのです。
――本書をどんな人たちに読んでほしいと思われますか? また、どのように活用していただきたいとお考えでしょうか?
理想を言えば、日本中のすべての医療職に読んでいただきたいと思います。
医師・薬剤師・臨床工学技士・理学療法士・作業療法士などには本書を読んで、自らが置かれた労働環境について考えてもらいたいと思っています。看護職では、主に看護師長・勤務表を作成する担当者・労働問題を専攻する看護研究者に、ぜひ読んでほしいのです。さらに現場の看護師が読んで、「超過勤務が多いのはよくない」「業務改善をしなくてはいけない」など労働問題について目覚めてほしいと思っています。そして「看護師が増えないから自院では改善は無理」とあきらめないでほしい。どんな工夫をすれば業務改善ができるのかということについては、各論Ⅰの解説や各事例にアイデアやヒントがたくさん出てきます。
今までは、個々の病院で取り組み、行き詰まりがちだった労働問題について、本書では行政や都道府県看護協会が支援して問題が解決していく事例が提示されています。「自分たちだけで頑張らなくていいんだ」ということが具体的にわかると思います。
――今後の事業の展開について教えてください。
ワークショップ事業の広がり、ガイドラインの普及などで看護師の労働環境は確実によくなっています。しかし課題が1つあります。それは「病院によって労働問題の取り組みに温度差がある」ということです。
潜在看護職にとっては、労働環境改善に熱心な病院のほうが復帰しやすいわけですから、何とかして、そうした情報を提供できるシステムを構築できないかと考えています。
最後に、本会がなぜ労働環境を改善する取り組みをしてきたか。それは“看護師の離職防止”のためです。現在までに各事業やプロジェクトから離職防止のための方策がたくさん出てきています。ですから、今後は本会の取り組みで、さらなる離職防止の推進をはかります。そして結果として、看護職として働く人数を増やせるかどうか。
本会は2025年までに地域で働く看護職をできるだけ増やすことを目標にしています。これからが正念場だと思っています。
-「看護」2014年1月号「SPECIAL INTERVIEW」より –