特別寄稿 特養あずみの里裁判① 事件の概要と裁判の経過

 長野県にある「特別養護老人ホームあずみの里」で、提供されたおやつを食べた女性入所者が意識を失っているところを発見されました。女性は救急搬送され、意識が戻らないまま病院で亡くなりました。この出来事は、現在、刑事事件として訴追されています。本稿では、裁判の経過を4回にわたって報告します。

 

 

刑事裁判となった出来事

 

社会福祉法人協立福祉会「特別養護老人ホームあずみの里」(以下:特養あずみの里)は、雄大な北アルプスの山並みが一望できる自然豊かな信州・安曇野の田園地帯の中にある施設で、2002年5月に開設されました。

特養あずみの里では、師長を含め看護職6人、介護職23人の体制で、定員65人の利用者をA、B、Cの3つのチームに分けて、食事・排泄・入浴等の介護に当たってきました。

2013年12月12日午後3時20分ころ、特養あずみの里のCチームの食堂で、おやつとして提供されたドーナツを食べていた85歳の女性入所者(Kさん)が、ぐったりして意識を失っているところを、遅れて食堂に入ってきた介護職が発見しました。

 

 

その日は、Cチームの17人の利用者が、9つのテーブルに分かれて、おやつの提供を受けていました。17人の食事介助の状況は、食事全介助の人が2人、食事一部介助の人が2人でしたが、Kさんは食事は自立で、特別に見守りが必要な人ではありませんでした。おやつ介助に当たったのは、介護職1人と、准看護師の山口けさえさんでした。介助予定だったもう1人の介護職は、排泄介助が長引いて、食堂に来るのが遅れたのです。

山口さんの主な業務は看護であり、この日のおやつ介助は応援でした。17人の利用者にドーナツやゼリーを配った後、食事全介助の男性利用者の隣に座ってゼリーを3口食べさせていたときに、遅れて入ってきた介護職によってKさんの異変が発見されました。Kさんは、咳き込むことも、もがくこともまったくありませんでした。

施設職員らによる救急措置、救急隊による救急措置と病院への搬送がなされましたが、Kさんは意識が戻らないまま、2014年1月16日、入院中の病院で亡くなりました。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年11月号)